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ポチくんにお仕置き

「ポチ君、この間の土曜日さぁ」 「えっ」 「何で会えなかったの? こっちも急なお誘いではあったんだけど」 「あ、えっと、えっと」 「友達と会ってたとか?」 「そ、そうです、それですっ」 「友達とどこ行ってたの? カラオケとか?」 「はいっ」 「何で急にそんなハキハキするかな?」 「えっ?」 「もしかしてさ、女の子同伴のやつ?」 「あ……」 「合コンってやつ? だったり?」 祖父母の家で飼われているむく犬のポチを日々可愛がる、心根の優しい凪は、はぐらかしたり、嘘をつくのが非常に苦手……というか、下手な少年で。 蜩が運転する車の中で、助手席に座った彼は、膝の上できゅっと拳をつくる。 「そう……です。ごめんなさい」 久し振りのデートだった。 裁判やら相談やら、仕事で忙しかった弁護士の蜩と、久し振りにこうして会えたというのに。 嘘をついたわけじゃないけど。 黙っていたことは同じくらいの罪になっちゃうのかな。 しゅんとする凪を隣にして、講習会の帰りで髪を撫でつけ、伊達眼鏡をかけた蜩は鮮やかにハンドルを切った。 「うーん、ま、ポチ君のことだから? 急な欠員の埋め合わせとして、参加要請受けて? 友達思いの君は断りきれずに、俺への罪悪感に胸をチクチクさせながらも? 止む無く合コンに行ってしまいました、って、ところかな」 全くもってその通りである。 言い当てられて素直に驚く凪の様子を視界の端に捉えて、蜩は、微かに笑った。 「大丈夫。怒ってないよ。俺、ポチ君のこと、よぉくわかってるし、オトナですから」 「蜩さん……」 信号でブレーキをかけた蜩はほっとしている凪に笑いかける。 「だけどお仕置きはさせてもらうからね?」 その日、蜩が凪を連れて行った場所はありきたりなラブホテルだった。 が、選んだ部屋の内装はというと。 十字の磔拘束、燭台、使い道不明のマシン、壁には鞭やら鎖やらが仰々しく飾られていて。 極めつけは拘束キットが備わるベッドが真ん中にでんと置かれた牢屋であり。 「お仕置きにはもってこいの部屋だよね?」 思わず立ち尽くす凪の肩に腕を回すと、眼鏡を外し、撫でつけていた髪をぐしゃぐしゃと自ら乱して、蜩は不敵に微笑んだ……。 「ポチ君のこと、俺、よぉく、わかってるよ?」 「あっあっあっ」 「触ってもいないのに、乳首いじっただけで勃起しちゃう、エロい子だって」 ベッドの四隅に設置された拘束キットに両手両足の自由を奪われた凪。 羞恥心と興奮で瑞々しい肌はうっすら朱色を帯びている。 服を乱し、ガチャガチャと繋ぎ目の金具部分を先ほどから頻りに音立たせていて。 反対に上着を脱いでネクタイを緩めた程度の蜩。 鋭い眼光を意図的に和らげた捕食者は、先ほどから、はだけた凪の胸元に延々と舌と指を。 「こんなコリコリさせて、尖らせちゃって」 「んやぁ……あぁん……っ」 「エロ通り越して、もう、淫乱だよね」 肌と薄ピンク色の乳首の境目を舌尖で一周する。 もったいぶった舌の愛撫に凪は下腹部を捩じらせる。 ぴちゃり、膨らんで屹立した乳首を口に含まれると、また上擦った悲鳴を上げた。 「やぁ……んっっ」 先走ったカウパーがたらたらと火照った熱源の先から滴り落ちる。 だが、やはり、蜩はそこに触れようとはせずに。 細くした舌の突端で乳首の付け根を舐っていたかと思えば、上下の唇で挟み込み、引っ張ったりして。 音を立ててきつめに吸い上げたり歯列でそっと刺激したり、唾液塗れにして、もう片方の乳首を指先で優しく押し潰したり、ぐにぐにと突起を摘まんで蹂躙するばかりで。 「乳首攻めでいってごらん、エロポチ君?」 ポチって呼ばれるの、ただでさえ嫌なのに。 エロポチだなんて、そんなの、もっとやだ……。 直接的な刺激がもらえずに、射精を引き止められた性器は、ただ先走りをたらたら溢れさせるだけ。 ひたすらもどかしい凪は金具をガチャガチャ言わせて身悶え、壮絶な物足りなさに必死で耐えていたが。 いい加減、そろそろ限界だった。 「も、むり……です」 「ん? 何が無理なの?」 「こんな、そこ、ばっかり……」 「じゃあ何がいいの?」 乳首から唾液の糸を恥ずかしげもなく連ねて蜩は尋ねる。 「アソコ……も、触って……ほしぃです」 「アソコ?」 「っ~~……チンチン、さ……さわってくださぃ」 羞恥心にも勝る性的欲求に忠実に、凪は、涙目で蜩に願った。 鋭い眼光をちらりと垣間見せ、蜩は、甘く囁く。 「俺に嘘つこうとしたらダメよ、ポチ?」 汗ばんだ肌伝いに利き手を這わせて、カウパー塗れの凪を、きゅっと握り締める。 「ひぁぁ……っっ」 「よかったら、わんって、鳴いてみて?」 蜩が出してきたとんでもない命令に、性的欲求に支配された凪は、従う。 「あ……んっわ……ぁん、やぁんっあぁぁんっっ」 「いいんだ?」 「んあ……ぁんっ」 「わん」と鳴こうとしても艶めく唇から零れるのは、当然、しどけなく解れた声。 掌にすっぽりと包み込まれて上下に扱かれると金具の方が小うるさく鳴った。 ツンと尖る乳首を美食家さながらの舌つきで食みながら、蜩は、ピストンを一気に早める。 「あぁぁっあんっあんっひぐ、らし、さぁんっっいっちゃう……っっ」 結局、両手両足を拘束されたまま、二回、凪はいかされた。 外してからも、二回……。 「だけど弁護士が牢屋に入ってるっていう図は頂けないよね、やっぱり」 「……そぉ……かも……です」 散々喘がされて非現実的な猥褻台詞まで言わされた凪の喉はすっかり嗄れていた。 上半身裸の蜩は胸元で丸まっている凪の頭に頬擦りし、嬉々として提案する。 「来週は遊園地行こうか」 「えっ、遊園地っ?」 顔を上げた凪が掠れた声で思わず聞き返すと蜩は大きく頷いてみせた。 「遊園地風ルームね」 ……もうやだ、こんな大人。 ぜっっっったい、俺より蜩さんの方がエロいに決まってる……。

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