11 / 11

第11話

 (フォウ)は真っ直ぐ(セブン)を見つめて、言った。 「一緒に虹を見に行こう」 「……まだそんなことを……」  深々と息を吐き、(セブン)はこちらを見下ろした。自分と同じ顔がやや翳っているように見えた。 「……わかったよ。僕が虹を見に行く時は、あんたの骨壷も一緒に持って行ってあげる。そういう約束だしね」  (セブン)が引き金を引いた。だが弾は発射されなかった。弾は残っているはずなのに、どういうわけかトリガーが空回りしてしまう。 「ちっ……こんな時に故障かよ。これじゃ何もできないじゃん……」 「……いいじゃないか、何もしなければ。殺し合いはもうおしまいだ」 「でも……それじゃ、どっちが『ミハエル・ヴェルトマー』になるか決められないよ。卒業できるのは一人だけなのに」 「二人だっていいじゃないか……。ヴェルトマー公爵は息子の代わりが欲しかっただけなんだから……双子だって問題ないはずさ」 「……そうかな。二人生き残ったらサドンデスになると思うけど」 「そうでもないだろ。共倒れになる可能性がある以上、もうこの辺りで区切りをつけると思うぞ。時間と金をかけてクローンを育て上げたのに、結果的に全滅したら公爵だって困るはずだろ……? ここまで来たら、二人まとめて合格させてくれるはずだよ……」 「……はあ。あんたはホントに呑気だな……」  また呆れられてしまったが、(セブン)もまんざらではないような顔をしていた。  (セブン)はごろりと横に寝転がってきた。 「……ま、あとは研究所側の判断に任せるよ……。あちこち動き回っていたら、疲れちゃった……。身体も痛いし……しばらく、休むよ……」 「……そう、だな……俺もだんだん眠くなってきた……。一緒に休もうぜ……(セブン)」  (セブン)は無言で頷いたが、もうほとんど聞こえていないようだった。  自分と同じ顔を横目で見ながら、(フォウ)も目を閉じた。血の匂いが鼻をついたが、だんだん何も感じなくなった。  二人で大きな虹の橋を渡る夢を見た。  虹の向こうでは、自分と同じ顔をした他の仲間たちが手を振っていた。

ともだちにシェアしよう!