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奉納舞 6

「さあ、行きましょうか」 「……はい」  着替えの疲れがすっかりなくなった僕は、若干赤い顔で宮司のあとをついていった。  社務所の玄関で(くつ)を履かせてもらい、舞台の下に用意されて椅子に座って面をつけてもらう。  やがて篠笛の皆さんの演奏が終わって舞台から下りてきたので、僕も立ち上がった。  面をつけて視界が狭くなっていて、足元がほとんど見えないので、倫宮司に手を引いてもらって舞台に上がる。  その手が離れる前に一瞬だけ、僕を励ますように強く握られ、そして僕は作法に従った足取りで舞台の中央に進み出た。  曲が切り替わり、人々のざわめきが消えた中、僕は舞い始める。  面をつけて舞う舞楽は、視界が狭くなる分、自分一人の世界に集中できるように思う。  そして自分一人になったように思うのと同時に、神の存在をも感じる。  そして今日はまた、自分の中に倫宮司の存在を感じることができる。  体が軽い。  手も足も、すべて自分の思う通りに動かせる。  両足で跳ぶ動作もまったく苦もなく行えるし、手に持った桴(ばち)という棒の先まできっちりと意識が行き渡っているような気がする。  倫宮司が、彼の持つ神使の力が、僕の舞に力を貸してくれているのを感じる。  そんな不思議な感覚の中、僕は舞を終えた。  拍手と歓声の中、舞台の端に進み、倫宮司の手を借りて舞台を降りる。  椅子に座って倫宮司に面を外してもらう時、耳元でささやかれた「良かったですよ」という言葉が、鳴り止まない拍手以上にうれしかった。  ────────────────  篠笛の皆さんと一緒に再び舞台に上がり、篠笛の代表の挨拶の後、全員で「ありがとうございました」とお礼を言って、無事に奉納演奏が終わった。  観客の人々が帰っていく中、僕は篠笛の皆さんだけでなく、見に来てくれた氏子さんや商店街の人たちにも記念撮影を頼まれまくった。  ようやく一通り撮影を終え、社務所に装束を脱ぎに行こうとすると、宮司に声をかけられた。 「中芝くん、社務所ではなくて自宅の方へ」 「え、でも装束脱がないと」 「自宅で脱げばいいでしょう?  どうせ装束は一晩しかもたないのですから、片付ける必要もありませんから」  そう言われて倫宮司に背中を押され、自宅へと帰った僕は、装束のまま自分の部屋に連れて行かれ、いつの間にか倫宮司から変身していた倫くんに装束を脱がされ、唾液とそれ以外の体液でもういいと言うくらいにたっぷりと体力回復をしてもらったのだった。

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