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最終話

 久しぶりに汗を流すと胸につっかえていたものも流れていくようだ。そして匡人のシュートは相変わらず理想的な放物線を描きリングに吸い込まれていく。 「ほ、本当に……勘違いしてていいのか?」  ボールを拾い上げながら言えば匡人は呆れた顔をしていた。 「勘違いじゃないって言ってるのに、わからない人ですね」 「わかんないのはお前の方だろ。だいたい俺は……はっきり、言われてないし」  尻すぼみになってしまった事が恥ずかしくて少し強めのパスを返すと、受け取った匡人は軽く息を吐いてそのままシュートを打った。 「…───好きに、なってしまったんですよね」  先輩のことを……と、呟く間にそのボールはリングに触れる事なくネットだけを揺らして入る。  それが夢みたいで、また涙ぐんでしまいそうになるから慌てて目を伏せた。 「……俺、言っとくけど重いから」 「そうでしょうね。想像できます」 「な、何だよそれ」 「でも、僕も結構粘着質だと思いますよ」  そして耳元で囁いた匡人は、また俺の胸を高鳴らせるんだ。  “だってこんな所まで追いかけて来たんですから”  甘い言葉に酔わされて、こじらせた糸が解けていく。  それは少しだけ俺を身軽にさせた。  だから、明日はもう少し素直になれるかもしれない。    終

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