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第14話

「あの時、凄く楽しかった。先輩からパスを貰うと今迄の何倍もスムーズにシュートが打てた。高校に入ってからもそれは偶然じゃなかったって確信したんです。だからコートを出ると態度が変わる先輩が不可解でした」  そして俺の指を捏ねる様にして握った。 「嫌われてるなら仕方ないと思ってましたけど、あんな所見たら……一気にそういう意味で気になりだしてしまって」 「もうその事は忘れてくれ」 「忘れられる訳ないじゃないですか。だから責任取って貰います」 「……そ、それって」 「大学まで追いかけて来たんです。それに住んでる所も割れてる。逃げられませんよ」 「ま、待って。頭が追いつかない」  頭を掻きむしりながら俯くと匡人が覗き込んできた。 「先輩は悪態ついてるより、そうやって素直に戸惑ってた方が可愛いです」 「そ、そんな事言うな……勘違い、してしまう」 「勘違いって何ですか」 「……な、なんかそれって、お前が俺の事を追いかけて来たみたいに聞こえるじゃん」 「だから追いかけて来たって言ってるじゃないですか」  そんな風に言われると調子が狂ってしまうのに、匡人は落ち着いた顔つきで聞いてくるんだ。 「最後の質問。……まだ僕の事、好きですか?」  こんな匡人は慣れなくて戸惑うばかりなのに、次第にこいつばかり飄々としててムカついた俺は思わず叫ぶように言っていた。 「好きだってば! 何度も言わせんな」 「本当に不器用な人ですね」  クスクスと笑うと匡人は俺を起き上がらせた。 「隣の公園。バスケコートあるんですね。桜の木があって、まるで初めてバスケした公園みたいだった」 「……俺もそう思ったからこのアパートにしたんだ」 「バスケしませんか?」  俺が素直になれば匡人も笑ってくれるんだと思うと胸の真ん中が暖かくなる。

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