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第13話
鍵を拾おうとした手をまた掴まれ、そしてもう一度匡人の声が響いた。
「教えてください。先輩は僕の事が好きだったんですか?」
匡人の声が耳に届くだけでもう全身が痺れている。掴まれた腕は熱いし、頭はくらくらして、もう限界は近い。追い詰められて口を開くと、きっとそれは止め処なく涙と共に溢れてしまう。
言いたくない。言ってしまったら本当に終わる気がする。
でも、真っ直ぐに俺を見据える匡人を見て、また盛大に俺の胸は高鳴ってしまったのも事実だ。
どうしても好きだから。
そしてその視線からは逃れる事は出来ず俺は崩れ落ちてしまった。
「……好きだよ……ずっと、好きだった」
そう言った瞬間、涙で滲んだ視界の中で匡人が柔らかく笑った気がして、気付いた時には唇が重なっていた。
そして触れるだけで唇が離れると遅れて理解した俺は赤面する。
「え、なんで……」
「全部先輩のせいですよ。あの日から頭について離れない。先輩が僕の事をどう思っていたのか気になって仕方ない。嫌われてると思ってたけど僕の事が好きだったのかなって思った時、今迄の態度も全部裏腹なんじゃないかって、そう思ったら納得したんです。先輩のパスは他の人とは全く違ったから」
匡人は指で俺の涙を拭った。
「高校の入学前に先輩とバスケした事覚えてますか?」
忘れるわけない。そう思って頷きながら顔をあげたら匡人は今までに見た事のない柔らかい表情で俺を見ていた。
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