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第7話
今まで話が書き進むことなく真っ白だった画面が、今は文字で埋め尽くされている。
黒斗と肌を合わせた事を思いだす度、芳親の気持ちに入り込むことが出来た。
「あれ……、鷲さん、もう起きていたんですね」
寝ぼけながら居間へと来る黒斗に、鷲はおはようと声を掛ける。
「おはようございます」
朝は苦手なようでぼんやりとしながらソファーに座る黒斗に、鷲は可愛いなと思いながら、きりのよい所まで書上げてノートパソコンを閉じて席を立つ。
「あの、体調の方は」
「まぁ、少し辛いけれど大丈夫だよ」
と腰を叩き、朝食の用意をする為に台所へと向かう。
あの時、黒斗は「鷲さんが良いんです」と言ってくれた。
だが黒斗はまだ22歳なのだ。これから色々な出会いをするだろうし、可愛い彼女が出来るかもしれない。
しかも鷲は黒斗より11歳も年上の男で、そんな事を考えていると胸が苦しくなってきてギュッと服を掴む。
(何を考えている)
黒斗が誰か知らない人と腕を組んで歩く姿を想像して、こんなに嫌な気持ちになるなて。
「鷲さん」
間近で名を呼ばれて、思いにふけていた鷲は驚いて菜箸を落としてしまう。
「わっ、すみません、驚かせてしまいましたか」
身を掲げて箸を拾い鷲に手渡す。
「い、いや、ごめん。ぼーっとしてた」
卵焼きを作ろうとしていたため、ボウルに割った卵を混ぜようと菜箸を突っ込んだのだが、動かない鷲が気になったようで声を掛けたそうだ。
「大丈夫ですか?」
心配そうな顔を浮かべて鷲を見る黒斗に、
「大丈夫。すぐに作るからな。リビングで待っていて」
と背中を押してリビングに戻るように言う。
「はい」
それでも心配そうな顔をしているので、鷲は朝食作りに専念し始めた。
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