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緊縛_5
藤が春画を描くようになったのは、顔見知りの店の主に誘われたのが切っ掛けで、彼の絵は評判が良くしかも衆道ものが人気であった。
いつもはつばめという名の陰間を雇い絵を描いているのだが、それが切っ掛けで売れっ子の陰間となってしまい、なかなか頼めない。
しかも他の陰間には描きたい子がおらず、店の主からは納品を迫られて焦る一方の藤は、自分の恋人の兄で、しかも武士である男に泣きついた訳だ。
理非知らず。
着物を乱し真っ赤な縄が手足の自由を奪う。そして真っ直ぐに向けられる視線が身体を火照らせる。
「いいぜ、芳親さん、すごく色っぽい」
筆を夢中で動かす藤。そして、その近くにはもう一人の視線がある。
獲物を狩る肉食動物のようにギラギラとした目。普段は優しい彼の、別の一面を見た。
たまらなく彼が欲しい。
体は正直で、触られてもいないのに下半身のモノは天を向いている。
「芳親さん、辛そうじゃねぇの。一回、抜いとくか?」
と立ちあがろうとする藤を、制する保の手。
「俺がやる」
触るなと、射抜かんばかりに睨まれて、藤は肝を冷やす。
「あぁ、そうだな、それがいい」
保が傍に来て芳親のモノへと触れた。
「保の独占欲を感じ、芳親はそれだけで感じて芯が痺れて、甘い声を上げて蕩けてしまう」
画面を覗き込み黒斗が一節を読む。
「で、この後は先ほどの鷲さんのように乱れるんですね」
「そう。いつもよりも感じて、保の事しか見えなくなる。俺が黒斗しか見えなくなるようにね」
すい、と頬に指を滑らせれば、その指を掴んで唇へともっていく。
「可愛い人ですね。鷲さんも芳親さんも」
「それだけ黒斗と保がかっこいいって事だよ」
軽く唇を重ね、そして続きを書く為にキーを打つ。
「珈琲で良いですか?」
「うん、お願い」
仕事の邪魔をしないようにと、黒斗は傍を離れてキッチンへと向かう。
程なくして良い香りと共にテーブルの上にマグカップが置かれる。
彼の煎れた美味しい珈琲を飲みながら物語の世界へと入り込んでいった。
【了】
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