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「おれと付き合ってください」 会社帰り、ほぼ毎日寄っている近所のコンビニで告白されて古泉葉一(こいずみよういち)は仰天した。 「最近、夜、寝る前に。いつも思い出すんです。どのおにぎりにしようか迷ってる貴方の横顔」 葉一は彼のことを知っていた。 最近、このコンビニでよく見かけるイケメン高校生。 グレーのフードパーカーにネクタイ、チェックのスラックス、茶ローファー、肩にスクバを引っ掛けて限定おかしを眺めていたり。 おにぎりをどれにしようか迷っていたら、真横にやってきて同じように迷っているような素振りでずっと立っていたり。 レジに向かえば真後ろに並んだり。 気紛れに雑誌を手に取ってパラパラ捲っていたら覗き込んできたり。 思い当たる節がなかなかあった葉一はぶわりと赤面した。 すごくかっこよくて目立つし、それにやたら接近してくるから、気にはなっていた。 ただ単に不思議で。 ただ単に人懐っこいコなのかな~、と思っていた。 まさか恋愛感情を持たれていたとは。 マジか。 おれ、めちゃくちゃフツーだぞ。 イケメン高校生クンを落とすポイントが総合病院企画運営課所属の地味職員のどこにあるのか不思議でならないぞ。 「名前。教えてください」 おにぎりコーナーの前で間近に顔を覗き込まれて葉一はどきっとした。 これまでやたら接近される度、そわそわしたりあせあせしたことはあった、それが恋愛対象最前線におかれているとわかった途端、てれてれ、どぎまぎしてしまう。 周囲には他の客や棚の整理をしている店員もいた。 皆、葉一とイケメン高校生のやり取りにそれとなく注目している。 「名前。だめですか」 「あっ、いや、えっと、こういう者です」 名刺を渡せば顔の前にすっと翳して綺麗な目を細めた彼。 「葉一くん」 イマイチ感情が読み取りづらかった麗しのサイボーグじみた端整フェイスが淡い喜びに彩られた。 ほんの少し嬉しそうに名前を呼ばれた葉一は乙女さながらに胸キュンしてしまう。 舞い上がってしまいそうになる。 「おれ、那波伊月(ななみいつき)です、葉一くん」

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