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《読者様リクエスト企画 『雛木と誠吾、尿道責められるってよ』7/7》

かくして雛木は、欲望が滾る矢上と、前立腺刺激での絶頂にいまだ震える誠吾の前に、カテーテルを刺されたまま置き去りにされた。誠吾の尿で満たされた腹はぱんぱんに膨らんでいる上に、消化不良な射精の名残で苦しくてたまらない。 だが、雛木が苦しさを訴える猶予も与えられない内に、矢上によって誠吾の腰が診察台の上で抱え上げられる。 ブラックデニムの前開きから突き出た矢上のペニスは、見たこともないほどに巨大だった。 手首ほどもありそうな太さに、腹を食い破ってしまいそうな長さ。そしてカリ首は高く、鍵爪のように返しになっている。自身で手荒く塗りつけた潤滑用のクリームでてらてらと光る様は、立派というよりは凶悪と呼ぶのが相応しい。 血管がぼこぼこと浮き、雄々しく反り返った矢上の雄に、雛木は息を呑んで見入ってしまう。誠吾が中イキできないのは性感が鈍いせいではなく、矢上があまりにも強大すぎて、受け入れるのが苦しいからというだけではなかろうか。 元々ストレートで、後ろの経験がなかった誠吾が、これをそう簡単に受け入れられるようになるとは思えなかった。 だが矢上は、何の躊躇もなく誠吾を正面から一気に押し貫いた。 「いやあああっっ!無理っす!無理いぃぃっ!」 誠吾の悲鳴などものともせず、矢上は自身を根元まで埋め込んだ。馴染むのも待たず、思い切り腰を引き、リズミカルに前後させる。 誠吾のアヌスは、まるで手首を突き込まれているかのように押し広げられていた。どうやらここへ来る前に広げられるか嵌められるかしたらしい。そうでなくては、こんなに一気に広がるとは思えない。 大口で頬張るように広がったアヌスは、巨根が引かれる度に肉色にめくれる。剛直が濡れた音を立てて出し入れされる生々しさは、アダルトビデオの非ではない。 肛虐の激しさにも関わらず、矢上の左手は誠吾のペニスとブジーを同時に強く握りしめたままだった。誠吾が初めて極めた場所をピンポイントで捉え、ずれることのないように固定しているのだ。 その状態でアヌスを抉られる誠吾は、矢上の左手越しにペニスの根本を両手で握りしめながら、ひたすら悲鳴を上げている。 右手一本で体を支え、獣のように誠吾を犯す矢上の腰のグラインドが、雛木にとっては目の毒でしかない。 それはあまりにも淫猥な光景だった。この激しさを、雛木とて大好きなアヌスで感じたい。一番気持ちいい場所を、あんな風に前からも後ろからも激しく擦り上げてほしい。 だが後ろ手で縛られた雛木はどうすることもできず、「あぁ……あぁ……」と切ない喘ぎを上げながら、目の前で繰り広げられる激しいセックスに身悶えるしかない。 「やあぁっ!あ゛あ゛っ!あ゛うぅっ!いぐ、いぐ、いぐいぐいぐぅっ!!」 誠吾が背を弓なりに反らせながら、濁った絶叫を迸らせる。前からも後ろからも前立腺を押し潰され、絶頂感に乱れ狂っているのだ。 矢上は剛直を少し引き抜くと、狙いを定めて亀頭を一点にぐりぐりと擦りつけた。 「い゛やああ゛あ゛あ゛あぁぁぁっ!!」 声の限りの絶叫に、矢上の「うぐっ」という低い唸り声が重なる。誠吾のあまりの締め付けに、ブジーを固定していた矢上の左手がわずかに緩んだ。 その瞬間、音もなく、精液と共にブジーが射出された。 精液に押されたブジーが、勢いよく吹っ飛んだのだ。 「んああああぁぁァンッッ!!!」 絶頂を知らせる誠吾の声は、芯から快感で満たされた人間のそれだった。 その証拠に、飛び出したブジーと精液が矢上の白衣を汚した後も、 「んああっ!あああんっ!ああっ!ああんっ!すご、すご、い……!すごいよぉ……っ!」 と眉尻を下げて堪らなさげに腰を揺すり続けている。 誠吾は、前立腺刺激による絶頂感と同時に、尿道の奥深くから固形物が飛び出す感触によって、普段の何十倍もの深い射精感を得たのだ。 だが、矢上はまだ全く終わっていなかった。ドクドク脈打つ巨大な肉棒は、先ほどまでと変わらず誠吾の中にずっぽりと嵌め込まれている。 「チッ、さすがにメスイキは無理だったか」 息を乱しながらも悪態をつく矢上の下で、誠吾は口からだらだらと大量の唾液を零し、ビクンビクンと痙攣していた。見開かれた瞳は焦点を結んでおらず、完全に我を失ってしまっている。 「ひ……あひ……へぁ……」 誠吾はもう、呼気と声の中間のような音を口から漏らすばかりだった。 さすがに限界とみたのか、矢上が放出まで間遠い剛直をずるりと抜き去る。苛立たしげに二度三度と自らの手で扱き、思い出したように雛木を顧みた。 「欲しいんだろう、これ。嵌めてやろうか?工藤のチンポとどっちがいいか、てめぇのケツマンコで比べてみろよ」 冗談ではあるが、発散し切れていない欲求への苛立ちはもちろん、工藤の奴隷の具合を確かめたいという好奇心もあった。 『サロン』で『K』と呼ばれている工藤は、奴隷の仕込みには定評がある。Kの調教を受けた奴隷を欲しがる好事家は多いと聞くし、自分の奴隷を工藤に預けて仕込んでもらいたがる主人もいるらしい。 一度は奴隷を全て手放した工藤がまた飼い始めたのが雛木と知れば、興味を抱くなという方が無理というものだった。 工藤に放置された雛木は、後ろ手に縛られ、床に膝立ちになり、誠吾の液体で満たされたカテーテルを勃起に固定されたまま、切なげにはぁはぁと感極まった吐息を漏らしていた。 その瞳は欲情に濡れ、欲しくて堪らないのか、尻をひくんひくんと痙攣させながら、腰を前後に揺すっている。 その姿はどう見ても、欲情し切っている雌犬のそれだった。だが、その雛木の口から、予想外の言葉が紡がれる。 「どっちがいいかなんてわかりません。だって、嵌めてもらったことがないんですから」 衝撃的な言葉に、矢上はしばし、堪えさせられた欲情を忘れた。 「嵌めてもらってないって、マジか!?お前、工藤と寝てねぇのか?なのにそんなに尽くしてんのかよ!?」 矢上の言葉に、雛木は目尻と唇の端を動かして笑みの形で応じた。 矢上の驚愕が、心地よかった。腹に他人の尿を甘んじて受け入れている今の自分は、矢上のような雄の中の雄といった男から見ても、『尽くしている』ように見えるのだ。 それは、信じられない程に、誇らしいことだった。 「尽くしてなんていません。変態な俺を、工藤さんはわざわざこうやって辱めてくれてるんです。こんなに幸せなこと、他にありませんよ」 とろりと笑んだ雛木を見て、矢上の背が目に見えてぶるりと震えた。 「あぁ……。俺ぁ他人のお古に興味はねぇが、今初めて、他人が手塩にかけて仕込んだ奴隷ってもんを味わいたい気分になったぜ。あんた、マジでいいよ。ヤツが見せびらかしたくなるはずだ」 欲情させられた腹立たしさを隠すようにくくっと笑った矢上は、いまだ萎える気配のない剛直を二度三度と扱くと、既に茫然自失状態の誠吾のアヌスに再び突き込んだ。 ぐずぐずにされた誠吾の秘穴は、当人の弛緩も相まって、いとも簡単にその太くて長い肉棒を受け入れてしまう。 「ケツマンコぎゅんぎゅんさせながら、そこで見てな」 矢上は雛木を一瞥し、唇をにやりと歪めると、弛緩した誠吾の尻へと再び腰を突き込み始めた。 「うひっ!?あきひろさっ?はひぃっ!やだやだやだやだ!ひ……ひぃんんんっ!!!」 強烈な刺激に意識を取り戻し、再び惑乱した誠吾の嬌声が響く中で、雛木はぼぅっと二人の接合部を凝視しながら、矢上の言葉を反芻していた。 『あんた、マジでいいよ。ヤツが見せびらかしたくなるはずだ』 それは、雛木の奴隷としての自尊心をこれ以上ない程に満たしてくれる言葉だった。 工藤に褒められるのが一番嬉しいのはもちろんだが、他の人間に工藤の奴隷として評価されるのがこんなに嬉しいなんて。 雛木は死にそうにもどかしい欲求の内で、誇らしさにうち震える自分をはっきりと知覚したのだった。 「知らない間に、結構調教が進んだみたいだね。ちゃんと飼うことにしたの?」 レイの言葉に、工藤は洒脱に片眉を上げた。 工藤とレイは、激しい交合を見せる矢上と誠吾、そして尿壺と化しながら発情している雛木の様子を、タブレットで盗み見ている。複数箇所に仕掛けられた隠しカメラは、集音マイクの感度も良好だ。 バースペースには他の客の姿はない。レイは大胆にも、タブレットの音量を最大にし、誠吾の嬌声と肌が打ち付けられる濡れた音を店内に響かせていた。 「どうかな。仕込んでみることにはしたが、飼うところまでは……な」 卑猥なBGMをものともせず、工藤は悠然とロックグラスを唇に運ぶ。 工藤とレイを隔てるカウンターに置かれたブランデーのボトルは、既に七割程度空いている。同じ縛り師に学んだ二人は、酒を片手に歯に衣着せず語り合い、寛ぎを見せていた。 「無駄な足掻きだと思うけどねぇ」 レイは呆れるように吐き出し、ブランデーのボトルの横にヒュミドールをゴンと音を立てて置いた。 その木製の箱の中には、太さがまちまちの葉巻が保管されている。銘柄はいずれもコイーバだ。 国内で手に入る葉巻の中では最もメジャーではあるが、工藤は昔からその香りを愛していた。 紙巻煙草はもう辞めたが、葉巻特有のタバコ葉の香りの魅力には抗いがたい。 どうせなら、と太目の葉巻を指差せば、レイが文句も言わずにそれを手に取り、シガーカッターで注意深く先端を切り落とした。 『上半身から出る液体はみんな嫌い』と言い切るレイだが、唾液が触れ合うことを厭わず吸い口に唇をつけ、カットの具合を確認してくれる。 こういう何気ない仕草で、気位が高くこだわりの強い男に友人として受け入れられていると知るのは、悪くない気分だった。 「イニシャル入りのコックリングを贈った時点で、もうすっかり夢中だったくせに。君はほんとに理屈っぽいんだから。 まぁいずれにせよ、僕としては君が雛木君を仕込む気になったと認めたのは嬉しいよ。彼は素直で可愛いし、大いに素質がある。うまく育てれば最高傑作になる可能性があると思うね」 レイは雛木をそう評しながら、視線を落とし、ガスバーナーの遠火で葉巻の切り口を丁寧に炙っている。 工藤が低温蝋燭用にジッポを持ち歩いていることは知っているが、葉巻にジッポオイルの匂いをつける無粋には我慢ならないのだろう。時々吸い口に唇をつけ、切ったばかりの太い断面に均等に火が回るように調整しさえしてくれる。 だが、そんな気遣いができるにも関わらず、このバーマスターは、匂いのないブタンガスを使用したシガーライターを用意することはない。どうやら、プロパンガスにつけられた匂いは気にならないらしい。 葉巻への火のつけ方ひとつとっても、一般的によいとされる嗜み方には目もくれない、自分のスタイルというものを感じさせる男だった。 レイはどうしようもない嗜虐趣味ではあるが、少なくとも目に優しい美しい容姿であり、自分をしっかりと確立している。工藤とは道徳感も哲学も全く異なるが、色めいた時間を共有できる対等な友としては申し分がない。 だから、覗き見されていると知っていても、度々この店に雛木を連れてきてしまうのだった。 工藤は絶妙な乾燥具合を感じさせる香りを放つ葉巻を受け取り、目を伏せて軽く煙と香気を吸い込む。 吸い口にはほんの少し、レイの唇の湿り気が感じられた。 その親密さに絆され、ついつい本音が零れてしまう。 「あの子を飼いたいよ。でも、幸せにしてやれるイメージがわかないんだ」 ふっ、と、葉巻の煙に紛らわすように工藤の懊悩が吐き出された。 葉巻をくゆらす様は泰然としていて、その胸の内に苦悩があるようには見受けられない。 だが、自分からわざわざ口にしたからには、多少なりとも聞いてもらいたい気持ちがあるのだろう。 そんな同輩に対し、レイは慰めるでもなく、両手を腰に当てて居丈高に突き放した。 「幸せにしてやるなんておこがましい。雛木君だって君に幸せにしてもらいたいだなんて思っちゃいないだろうよ。いい大人なんだから、責めるほうも責められる方も自己責任ってもんだって。 君が日和(ひよ)ってどうする。いくところまでいってやろうっていうあの子の心意気を買ってやんなよ」 アルカイックスマイルを完全に脱ぎ去ったレイは、生来の気丈さそのままに言い放つ。実は、ちゃきちゃきの江戸っ子なのだ。 レイは自分の奴隷を責めることに躊躇がなく、人間として終わっていると思うことも多々あるのだが、自らの欲望を突き詰めるまっすぐさは、工藤にとっては常に眩しいものだった。 だから、苦笑で返すしかないのだ。 レイの言うことは正しい。ただ自分が、不甲斐ないだけだ。愛を口にし、全身で恭順を示す雛木を相手に、いつまでも迷いを捨てきれないでいる。 彼の全てを所有したい。身も心も、文字通り完全に自分のものにしてしまいたい。人格も人生も、全てをこの手に握りたい。 だが、彼を不幸にしたくはなかった。かつて奴隷の一人を不幸にしてしまった悔恨の念は、いまだに工藤の胸に鮮やかに焼きついている。 雛木に対して、いい加減腹をくくらなければと思ってはいるが、工藤はまだそのきっかけを掴めずにいた。 カウンターに置かれたタブレットの中では、顔を紅潮させ、はぁはぁと口で荒い息をつく雛木が、もどかしげに矢上と誠吾の荒淫を見つめている。ペニスには、黄色い液体を湛えたカテーテルがいまだ串刺しになったままだ。 そんな状態で文句も言わず、ただ発情している様子を見れば、工藤はついつい唇を綻ばせずにはいられない。 素直で、健気で、どうしようもなく淫らな雛木が、可愛くて仕方がなかった。 「まったく、いい子すぎて困るな。滅茶苦茶にしてやりたくなる」 独り言のような工藤の呟きの甘さに、レイが「けっ」と下品に応じる。 「まぁ好きにしなよ。ただし、しっかり捕まえておかないと。あの子を飼いたいって奴はすぐにでも現れるだろうよ。僕のこういう予感、外れないって知ってるだろ?」 レイの不穏な予言は聞こえなかった振りをし、工藤はグラスに残ったブランデーを煽る。酒と葉巻のせいで、考えが纏まらないのだと言い訳したい。 今はまだ、雛木が見せてくれる献身と淫らさを、ただただ愛でていたかった。

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