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《読者様リクエスト企画 『雛木と誠吾、尿道責められるってよ』6》
一方、放置されていた雛木はもう耐えられなくなっていた。床に仰臥したままで、カテーテルを突き込まれたペニスをゆるゆると扱いている。
診察台は見上げる位置にあるため、何が行われているのかを見ることはできない。時折見える、絶頂に痙攣する誠吾の足先や、聞いたこともないようなよがり声、そして主人達の会話からしか情報を得られないのだ。
目と鼻の先で行われているプレイが、気になって仕方がなかった。情報が限定されればされただけ、想像も欲情も膨らんでしまい、我慢ができなくて股間に手が伸びてしまう。
どうせ工藤も矢上も誠吾にかまけていて、こちらを見てはいないだろう、といういじけた気持ちも多少あった。
少しだけ、ほんのちょっとだけなら、と、やんわり扱く右手が止まらない。
だって、あの誠吾が、あんな声を上げて身悶えているのだ。一番感じる場所を前からも後ろからもこりこりしてもらって、どんなに凄まじい快感を得ているのだろうと思うと、羨ましくて仕方がない。
雛木は、誠吾に施されている極上の責めに比べれば、気を紛らわすために自らペニスを扱くことなど大したことではないような気がした。ゆるゆると手を上下させながら、わずかに残った理性で、カテーテルが抜け落ちないように辛うじて支えている。
だが、奴隷の自慰を見逃す工藤であるはずがない。じろりと床に落とした視線で勝手な振る舞いを確認すると、やおらしゃがみこんで雛木のカリ首を思い切り握り潰した。
「あぐうぅぅっ」
痛みに呻き、工藤の手に縋るように指を食い込ませる。カテーテルを支える左手を離さないでいられたのは、ひとえに意思の力ゆえだった。
「今、何をしていました?器は器らしく大人しくしていなさい。それともあなたは、縛られていないとじっとしていることもできないのですか」
全力ではないかと思うほどの握力で急所を握られ、雛木は「うぅぅー、ぐうぅぅー」と唸るばかりでまともに返事もできない。ただでさえ敏感な場所なのに、今はカテーテルが挿入されたままなのだ。外側からも内側からも耐え難い痛みが襲う。
「うぐ……ぐ……すみま、せん……」
やっとのことで謝罪の言葉を押し出すと、工藤の手の力が少し弛んだ。
「まったく、躾ければ犬でさえ待てができるようになるというのに。他人の快感を前に我慢ができないなんて、浅ましいにも程があります」
呆れられ、申し訳なく、恥ずかしい。だが、工藤に構ってもらえるのは正直嬉しかった。
そこでようやく雛木は、自らを弄ってしまったのは工藤の気を引きたかったせいもあると自覚した。
「すみませんでした……もうしません……」
叱られた子供のように詫びると、あまりの痛みに半ば起き上がってしまっていた上体を再び床に横たえ、すんすんと鼻を鳴らして大人しくなる。
「いい子ですから、じっとしていなさい。わかりましたね?」
噛んで含めるように言い聞かせられ、雛木は涙目でこくこくと頷いた。
構ってもらえなくても、工藤はきちんとこちらにも注意を向けてくれていた。それがわかったから、腹が苦しくても、もどかしくても、寂しくても我慢できる。
しょんぼりした様子で大人しくなった雛木を見て思うところがあったのか、カリ首を握り潰していた工藤の手が更に弛んだ。そして慰撫するかのように、親指の腹で括れの部分をほんの少し撫でてくれる。
そのわずかな刺激ですら気持ちがよくて、何より工藤の手で擦ってもらえて嬉しくて、雛木はほんの少し萎えかけていた股間をまた硬くするのだった。
その変化を手の内で感じた工藤がぬるく微笑む。
「確かに、これほど淫乱なあなたにはお預けが過ぎたかもしれません。器に徹することができたらご褒美をあげますから、もうしばらく頑張れますね?」
ご褒美、という言葉にカッと全身に火が灯る。普段のプレイも雛木にとっては褒美以外の何物でもないのに、工藤があえて『ご褒美』と言ってくれるとなれば、いったいどんなことをしてもらえるのだろう。
期待に胸を膨らませ、雛木はうんうんと一生懸命首を縦に振る。診察台の上からは誠吾のよがり声がなおも降り注いでいたが、もう全く気にならなかった。
そんな素直な奴隷としっかり視線を合わせ、工藤はカテーテルに貫かれた雛木のペニスを左手でおもむろに扱き始めた。器に徹することができるかを試そうとでもいうのだろうか。
工藤の右手は、いまだ雛木のカリ首を握りつぶしたままだ。その指先は、尿道口付近で器用にカテーテルを支えている。
「あっ、あんっ……」
工藤に扱いてもらっているのだ。当然声が出てしまう。
クリーム状の潤滑油にまみれたゴム手袋越しの手は、独特なぬめりで雛木の雄を刺激する。
「器に徹するのでしょう?器は声を発しませんし、手足も動かさない。ただその場にあって受け入れるからこそ美しいんですよ」
即物的な快感に支配され、工藤の抽象的な言葉を咀嚼しきれない。雛木はただ、声を出してはいけない、手足を動かしてはいけないというわかりやすい命令だけを自分に言い聞かせた。
声を殺し、寝転がったまま両足を突っ張り、たった一つのよすがであるかのように両手指でカテーテルをつまんで支える。
カリ首を締め付け、カテーテルを固定した工藤の右手はびくとも動かないまま、左手だけが管に犯されたペニスを軽やかに嬲る。
雛木はその鮮やかな快感に、ただただ腰を虚空に向けて突き上げた。手足と口を封じ、器に徹しようとするあまり、腰が不格好に動いてしまっていることは意識にも上らなかった。
射精してはいけないということは、百も承知だ。カリ首を締め上げる工藤の意図は十分に理解している。だが、工藤の手で擦られればどうしようもなく気持ちがよくて、腰を振ってしまっていると気づいても後の祭りだった。
唇を引き結び、手足は石のように硬直しているが、一度動き出した腰は止められない。いつしか工藤の左手は雛木を扱くことをやめ、ただ筒状に丸めて添えられている。その手の中へ、突き込む腰の動きが止まらない。
雛木は今まさに、工藤の手を使って自慰に励んでいた。薄い皮膚越しに、感じやすい裏筋が中と外から同時にごりごりと刺激されるのがたまらない。
――あっ、きもちいっ、きもちいいっ!お尻も、ほし……!
まずいと自覚した時にはもう遅かった。一気に射精感がこみ上げ、カテーテルがはめ込まれた尿道に白濁が迸る。それと同時に、工藤の右手が再びカリ首を思い切り締め上げた。
カテーテルが誠吾の尿で満たされ、工藤の手でカリ首を圧迫されているせいで、雛木の射精はどこへも向かえない。
「っ……っ……ゃぁぁぁっッ」
迸らせることができない精液そのままに、かすれた小さな悲鳴を上げて雛木がのけぞる。カテーテルを差し込まれたペニスの先端からは、ほんのわずかに白濁液がつっと垂れた。
だが、その量は絶頂にはあまりにも少ない。
――うそ、出てない。出したのに、出てない。なんで?どこにいっちゃったの?俺のいったの、どこにいっちゃったの?
パニックに目を見開く雛木に、静かな声がかかった。
「あぁ、精液が膀胱に逆流しましたか。あなたのペニス、壊れてしまったかもしれませんねぇ?」
それはあまりにも酷い問いかけだった。それでいて、過ぎるほどに甘美だった。
雛木は惑乱の中でも、首をぶんぶんと縦に振って肯定を示す。
壊れてもいい。それが工藤の奴隷としてふさわしい体だというのなら、射精なんてできなくて構わない。
雛木は、射精したという確かな感覚があるのに放出感のない、もどかしくも恐ろしい絶頂の余韻の中で、震える唇を釣り上げて微笑みの形を作った。
「ありがとうございます」
検査着越しでも見て取れるほど、雛木の腹は誠吾の小便と逆流した自らの精液でパンパンに膨れ上がっている。その上、雛木の瞳は茫洋とし、表情は弛み切って、決して美しいとはいえない。
だが、主人の手で施される全てを受け入れ、積極的に快感を貪り、あまつさえ感謝の言葉を口にする様子は、矢上の腹の奥深いところにある凶暴な嗜虐心をずぐんと刺激した。
「……ちっ!誠吾、嵌めるぞ!」
雛木の奴隷としての恭順を目の当たりにした矢上が、たまらないというように派手な衣擦れの音をさせながらジーンズを太腿までずり下ろす。
その様子を見遣る工藤の視線は、どこか勝ち誇った輝きを帯びていた。
「性豪とまで呼ばれた矢上さんを欲情させたのです。あなたの痴態はとても魅力的だと証明されましたね。素敵ですよ。きちんとお礼を言えたのも立派です。
……とはいえ、そもそもはあなたが余計なことを言ったのが発端ですし、勃起させるなという命令に従えずに私に恥をかかせたのも事実です。結局器に徹することもできませんでしたしね。
功罪を勘案し、彼らの営みが終わるまで尿壺を務めることで許して差し上げましょう」
いまいち理解できていない雛木は、息つく間もなくボンデージテープでカテーテルごとペニスをぐるぐる巻きにされた。抜け落ちないよう、しっかりと固定されている。
その上で、両腕を背中で捩じり上げられ、手首がぎゅうっとゴムのような感触で搾り上げられた。ゴム製の止血バンドで後ろ手に拘束されたのだ。
その状態で引き起こされ、膝立ちで診察台のすぐ下に据えられる。雛木の視線の高さは、ちょうど診察台と同じになった。目の前には、ブジーの隙間からだらだらと精液を拭き零す誠吾の股間と、ひくんひくんと不随意運動を続ける尻の狭間があった。
生々しい光景を前にごくりと生唾を呑む雛木の目の前で、片手では掴み切れないほどに太く長い矢上の剛直が、濡れそぼった狭間に近づいていく。
今まさに、というタイミングで、工藤の声がかかった。
「では、せいぜいギャラリーとして彼らを盛り上げてください」
えっ?と訝しんで振り返った雛木の視線の先で、工藤は白衣の裾を翻し、あっさりと部屋を後にしたのだった。
《続》
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