58 / 115

新学期 01

新学期初日。 真新しい高等部のブレザーに腕を通す。 少し寒いからお気に入りのパーカーを中に着て。 シャツを第二ボタンまで開けて。 緩くネクタイを締めて。 ピアスをつけて。 ネックレスをつけて。 校則なんか気にせず着たいように着る。 湊は式典で挨拶を読むため先に寮を出た。 主席の俺が拒否するため毎回湊が代読しているのだ。 ごめん、と思いつつ式典が嫌いな俺は断固拒否。 あの空間にいることすら苦痛でしかない。 「仕方ないなぁ」と引き受けてくれるからいつもなんだかんだと甘えてしまう。 今年も友人に大役を押し付けた俺は屋上へと直行した。 本館最上階まで上がり、生徒会室の扉を通り過ぎ、突き当りを曲がった奥にひっそりと存在する階段を上る。 本来立ち入り禁止だが無視。 合鍵を使って屋上へと出た。 風があって少しまだ肌寒い屋上。 けれど日差しは暖かくて目を細めた。 下を眺めると登校してくる生徒たち。 幼等部と初等部のいる棟へ向かう低学年の子供。 中等部のある棟と高等部のある棟へ向かう高学年の人たち。 そして大学は道を挟んで別の敷地。 それぞれが自分の教室のあるところへと向かう。 そんな様子をぼーっと眺めてると開始5分前のチャイムが鳴った。 朝の始業前だけは開始5分前のベルが鳴る。 まだ教室にいない生徒は急いで教室に向かう合図になっているのだ。 けれども俺はチャイムを無視して寝そべる。 エスカレーター式に上がれるこの学校には入学式という概念があまりない。 幼等部、中等部、は纏めて入学式が行われ、外部からの新入生もその式に参加する。 確か....昨日あったはず。 しかし初等部と高等部に入学式はなく今日の始業式だけ。 だからサボりやすい。 校長や理事長のクソ長ったらしいお話聞くのの何が楽しいんだ。 大半の生徒が寝てるだろ。 同じ寝るなら気持ちよく寝たいって思うわけで。 気持ちよく寝るなら椅子よりもやっぱり 寝転がって寝るのが一番だと思うわけ。 特に保健室のベッド。 あれは格別。 そんな事を思いながら、目を瞑る。

ともだちにシェアしよう!