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体育 01

「あー、だるー.....」 4限目の授業を半分以上寝て過ごした俺は、相変わらず湊に揺すり起こされて目を覚ました。 「ほらほら、早く着替えなきゃ遅れるってば」 欠伸をしてだらだら歩いてると、腕を掴まれ更衣室まで足早に引っ張ってかれる。 俺まだ授業出るって言ってない、なんて抗議の声は聞き入れてもらえなくて。 結局ジャージに着替える羽目になった。 ネクタイと同じく学年によって色が違うジャージ。 ベースは黒っぽいけど腕と裾の部分に少し幅のある学年色と細く白のライン入り。 ズボンも同様。 縦に一本、少し幅のある学年色と細く白のライン入り。 そして名前の刺繍も学年色だ。 俺たちの学年色は青。 ジャージやネクタイに使用されてる青はそこまで鮮やかな感じじゃないけど。 俺はすごく気に入ってる。 久々に袖を通す服たちからふわっと柔軟剤が香った。 安心するいつもの香りを鼻腔いっぱいに吸い込み、ふぅと息を吐く。 そういや、あいつの使ってる柔軟剤..... ((....いい.....匂いだったな.....)) いつぞやに借りた服の香り。 ふと思い出してしまいボッと顔が赤くなる。 ((いっっみわかんね、変態みたいじゃん....っ)) 「いやー、久々に体動かすな〜」 半袖の体育着の上からジャージを羽織り、前を閉めながら湊が呟く。 そんなとき俺はというと。 頭に浮かんだ考えを掻き消すように宙で腕を振ってた。 「....ねえ.....何してんの」 「へっ?ぁ、いや、これは....別に....っ」 「ほーん....さては、せんっ...」 「なーにを言おうとしてんのかな???ん??」 何か思いついたようにニヤニヤと笑い出す湊。 あらぬ事を言われる前に肘鉄を食らわせた。 「ぃってぇー....」 「自業自得」 「だってさぁー」 口を尖らせながら言い訳。 放置してスタスタ体育館へと歩き出す俺の後ろを、 横腹を摩りながらついてくる。 「やっぱさ。絶対なんか意識してるでしょ、先輩のこと」 「んなわけあるか。あってたまるか」 「またまた、そんなこと言っちゃってー」 肩を小突く指を払いのけ、冷えた手をポケットに突っ込む。 そして、やけにいつもより賑やかな体育館に首を傾げながら足を踏み入れる。

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