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第10話
翌朝、子猫の鳴き声に目が覚めた。
ノアールだ。
朝日が、目に差し込む。
気怠い身体を起こすと、ベッドに一人だった。
「ノアール…?」
開け放たれた窓から、冷たい風が入り込む。
「…何の契約だったんだ…」
昨晩の情事を思い出す。
ただ、自分は抱いて、眠りについた。それだけだ。
ガリガリと扉を引っ掻く子猫の元に、行くと、ドアを開ける。
黒く小さな塊は、統夜の懐に飛び込んできた。
「お腹が空いたかい」
ノアールは、統夜の胸の中で小さくグーグーと喉を鳴らしている。
「…ノ…アー、ル…?」
黒い子猫の影に重なって、何かが見えた。
抱き上げれば、それは現れた。
十字のケロイド。
あの華奢な胸にあったものと、同じ傷。
「…まさか…」
そっと触れると、痺れるような痛みが奔った。
「!」
夢では無い。
契約。
自分は何の契約を交わしたのか。
統夜は、まだ知らずにいた。
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