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第11話

 ノアールにエサを与え、いつものように統夜は家を出た。  公園を抜け地下鉄に乗る頃には気怠さも消えていた。  窓の外には漆黒の闇が浮かんでいる。  そこに見知った顔。自分の顔があった。  時折揺られながらぼんやりと自分の顔を観察していると、ふと視線を感じた。  見れば、車両の奥に立つ黒尽くめの男が、統夜を見ていた。 「?」  銀に近い金の髪を後ろに一つに束ね、黒い外套は足元まで覆っていた。  腕を組み、まるでブレーキの重力変化など感せぬ様に立つ男は、「目があった」というより明らかに統夜を見ていた。  彫りの深い顔。  高い鼻梁の影に、銀の瞳が鈍く輝いて見えた。  病院の、患者の一人か。いや、見たこともない顔だ。 「!」  チクリと、胸が痛んだ。  思わず、左胸を押さえる。  痛みは、徐々に熱を持ち、統夜は額に汗が吹くのを感じた。  何が起きたのか、もう一度見れば、男は消えていた。  痛みも、同じく消えていた。

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