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第58話

オレは無意識に聖夜を睨みつけると、聖夜は澄ました顔でお風呂入って来いとオレを促す。仕方なくオレはバスタブに向かった。中途半端に投げ出されたそれはまだくすぶっている。 「聖夜の馬鹿」  オレは独り言をブツブツ言いながら身体を流すけど、やはりまだ熱が引かないそこをオレは自分で慰め始めた。 「んん…ん」  声を必死に抑えて自分で扱く。なんて情けない姿だろう。聖夜の意地悪。そうもういながらも続けた。 「ふぅ……んん」  もう出る。そう思って扱く手を速めるとオレは呆気なく果てた。その直後だった。 「着替えここ置いておくぞ」  ドア一枚隔て聖夜がいるではないか。いつからいた? 気づかれてない? オレは内心ドキドキで落ち着かない。 「は、はい」  オレは何事もなかったかのように返事をすると聖夜は立ち去った。 「はぁ……びっくりした……」  なんでオレがこんなにビクビクしなきゃいけないのか。納得出来ぬまま僕は身体を流し、綺麗に身体と頭を洗うと、湯船に浸かる。  聖夜は優しいし、なんでもこなすパーフェクトマン。でもオレには少し意地悪。でも……。結局完璧なんだよな。不愛想くらいで突っ込むとこないもん。オレはぶくぶくとお湯に浸かったまま恋人の弱点を探すけど見つからない。 「ぷは……」  なんか悔しい。オレはそれに比べて……なんも出来ない。情けないやら悲しいやらで涙すら出てこない。 オレのどこがいいんだろう。そんな事まで考え始めて止めた。 「出よ」  オレは湯船から出て軽くシャワーで流すとお風呂から上がり身体を拭く。用意されていたのは新しい下着と上下スエット。今度はシャツ一枚じゃないんだ。内心ホッとしてオレは着替えると、濡れた頭を拭きながらリビングへと戻った。 「出たか、俺入って来るから」 「うん」  聖夜はそう言うと風呂場へ行ってしまった。喉乾いた。水もうらお。オレは冷蔵庫を勝手に開けてミネラルウオーターを一つ取りソファへ。ごくごくと喉の渇きを癒しながら改めてリビングを見回す。余計な物一つもなく綺麗に片付けられたそこは埃一つ無さそう。   「CDラック」  音楽なに聴くのかな。オレは近寄って漁ってみる。そこはバリエーション豊かで流行りのロックからクラシックまで揃っていた。本もそうだったけど、なんでも見て聴くんだな。 「苦手な物ないのかな?」  オレが聴くのはもっぱらポップスのみでしかも趣味は限定される。本なんてほぼ読まないし。そこから違うのかな? あれだけ本見てれば知識だって相当な物だろうし、音楽も多趣味。オレはほぼ無趣味。  比べたって仕方ないけど、仕事の出来がこうも違うのは視野の狭さのような気がするのは気のせいだろうか?企画書未だに書き方が分からない。教えてって言って教えてくれるような人でもない。見た感じたと仕事とプライベートは割り切っている感じ。  どうしたらいいのかな……。水を飲みながらいつの間にか仕事の事考えている。なんとかして唸らせたいんだけどな。  そうこうしている内に時間は経ち、聖夜が風呂から出てきた。やっぱり濡れた髪が色っぽくて綺麗。 オレは思わず見とれてしまう。 「明日昼間送って行ってやるからそれでいいな」 「え? あ、うん」  まさか見とれていましたなんて口が裂けても言えない。オレは聖夜を気にしながらも水を飲んで誤魔化した。  

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