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第1話
湊side
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──────────────え!
バッと俺から離れた部長。
「…………………………」
顔を見て何が起きたかハッとす!
おかげでデロデロに酔っていた
俺はサッーと酔いが冷めた。
な、何でこんな事になったんだ!!
遡る事数時間前
俺は相変わらず部長に怒鳴られていた。
「やり直し!」
部長はいつものように
眉を寄せ冷たい口調で
提出した企画書を机に投げ出す。
「………………はい」
消え入りそうな声で
俺は企画書を掻き集めて
自分の席に戻った。
入社してほぼ毎日繰り返される
この光景に俺も噛み付く
気力さえ無くした。
ここはスマホなどの
アプリゲームを専門に企画開発している
会社アクア!業界ではかなりの
大手企業!
俺は殆ど苦労すること無く
大学卒業と同時に入社。
この企画開発部に
配属されて半年が経とうとしている。
でも────未だに
部長の駄目出しばかりで
ほぼ雑務しかしてない
普通の平社員一之瀬湊
最初は納得いかなくて
噛み付いたりしたけど
あのクールな無表情
28歳の若さで
部長席に座る
やり手如月聖夜 を
頷かせる企画書が
未だに出せないでいた。
部長席に座る彼は
少し眺めの前髪から
鋭く企画書に目を通す。
笑わない。
いつも難しい顔して、
仕事をこなしていく。
綺麗な黒髪、
端正な顔立ちでイケメン。
でもこの仕事で唯一
結果を出しているエース。
その点俺は見た目も
中身もどこにでも
いる平凡なサラリーマン。
まだ歳より若く見られるだけの
なんの取り柄もない新人。
くそ────絶対唸らせてやる。
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