68 / 89
出逢い 9
「はぁ…1口でいいから」
スプーンで1口分掬い、無理やり口に突っ込む。
「…んぅ…」
飲み込んだのを確認して、すかさずもう1口突っ込む。
「ちょっ…1口って…」
「いいから食え馬鹿」
そして飲み込んだのを確認して、再び1口突っ込む。
それを繰り返すうちに、皿の中身は完食されていた。
「よし、寝ろ」
食器を持って立ち上がると。
「…なんだ」
俺の服の裾を握った翠が。
「一緒に寝よ…」
「っ…後で行く。先に寝てろ」
翠はまるで猫のようだ。1日中寝て、好きな時に
遊んで。
それでもってたまに甘える。
いつもは何事にも無関心ですみたいな顔を貫くくせに、たまに出るデレはなんだ。
俺の気持ちは、里親なんてものじゃなくて…
「手のかかる子猫を飼ってるみたいだ…」
哀愁漂う溜息が出たのは何故だろうか。
ともだちにシェアしよう!