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出逢い 10
そんな日々が続いたある日。
俺は仕事部屋にてパソコンに向かっていた。
カタカタ、と無機質な音だけが響く中、翠も同じ部屋で本を読んでいた。
最初は仕事部屋に入れるつもりはなかったが、1人にすると不安になってPTSDを発症しやすくなるので、なるべく一緒の空間にいるようにしたのだ。
連日同じような仕事内容でため息が出る。
飽きた。
その時、ふと。
いい暇つぶしを考えついた。
「おい、翠」
「なに?」
「ちょっとこっち来い、で、これやり方教えてやるからやってみろ」
「え…できないよ」
そう言いながらも寄ってくる。
俺は席を立ち、そこに翠を座らせた。
「使い方でも覚えとけば、何か役に立つかもしれねえしな…やっといて損はない」
翠の背後に回り、1から教えていく。
「こうやって、…こうする」
「わかった」
翠は、予想よりも遥かに学習能力が高く、仕事を完璧に完了させた。
「できた…!」
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