24 / 89

過去 3

その日の父親はいつもより酷く機嫌が悪かった。 いつものように俺に暴力を振るったあと、大きめなカバンに、札束を詰め込んでいた。 母親が何か叫んでいたが、俺の意識は朦朧としていたのでなにも聞こえなかった。 薄れゆく視界の中で、父親がバックを持って家を出て行くのを見た。 それが、最後に見た父親だった。

ともだちにシェアしよう!