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過去 4
目を覚ますと、そこは変わらない景色。
物が散乱している部屋に、充満したタバコの匂い。
ただいつもと違ったのは、父親がいない事だった。
父親がいなくなった事は嬉しかった。
…ただ、その日から、母が狂ってしまった。
まるで父親が乗り移ったかのように、母は俺を殴り続けた。
「あんたさえいなければ、あの人は…!」
再び始まった暴力。
「さっさと死ねよ!こんなの産むんじゃなかった!」
俺はただ、ひたすら耐えた。耐えなければ、生きていけなかった。
あの頃は、身体中にあるおびただしい数の根性焼きが、とても痛かったのを覚えている。
生きるのに、耐えるのに必死だったんだ。
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