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おまけ

魔導狩りが殲滅され、再び安寧とした日々が訪れた。 一度は閉めた店を再開し、客から依頼のあった薬を取りに森へとやってきた薬草(ハーブ)屋。 「あっ、こ、こんにちは薬草(ハーブ)屋さん。ちょ・・・っと待っててください・・・ね?」 出迎えた少年は薬草(ハーブ)屋の顔を見て一瞬(おのの)いたが、なんとか笑顔をつくり奥の部屋へと駆け込んでいった。 「先生っ!薬草(ハーブ)屋さん来ちゃいましたよ!早くしてくださいってば!」 「いつもみたいに泣いて詫びて帰ってもらえ」 「もおこれで三回目だから無理ですっ!!」 まったく、と溜め息をつく薬草(ハーブ)屋。 この小さな小屋では、奥の部屋での会話が丸聞こえなのである。 立派な魔法使いのはずなのに、弟子が可愛過ぎてまともに仕事をしないとは、困ったものだ。 あの日、魔導狩りの事を聞いて森へと走って行った少年を心配し追いかけ、()の当たりにした惨劇。 紙くずの様に燃え尽きた魔導狩りたちと、抱き合ったまま剣に貫かれた師弟。 せめてふたりを同じ墓に入れてやろうとしたが、死んだと思っていた魔法使いが(おもむろ)に剣を抜き、ふぅと一息ついてから挨拶してきたので肝を冷やした。 確かに、ふたりとも心臓を一緒に貫かれていたはずなのに。 「心臓を貫かれたぐらいじゃあ死なないよ。人でなしだからね」 その上、魔法使いの心臓を貫いて流れた血が少年の身体に流れ込んで彼の傷を癒し、今はこうして元気に主を叱っている。 「先生いい加減に仕事してくださいっ!薬出してくれないなら俺、出ていきますよ!」 「出ていってどうするんだ?俺なしで生きてなど・・・」 「薬草(ハーブ)屋さんに雇ってもらいます」 「薬草(ハーブ)屋!ほら出来たぞ持っていけ、だがヴェセルは渡さん!」 (はな)から少年を雇うつもりなどない。 人でなしの魔法使いが心臓を貫くほど大切にしている子に、手を出すような愚か者ではないのだから。 注文通りの品物を確認し、代金と差し入れに持ってきた果物を渡し、薬草(ハーブ)屋は帰っていった。 また、可笑しくも穏やかな日々が延々と続くのだ、と思いながら───。

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