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愛、屋烏に及ぶ

朝が苦手な岩泉×家に転がり込んだ及川 及川ver. 眩しい朝。カーテンから差し込む光。聞きなれた声に目が覚める。 隣には岩ちゃんが寝ていて、口からヨダレがたれている。 ベッドから降りてリビングに行くと、閉められた窓からベランダの柵に止まる小鳥が見えた。 「かわいいな。」 そう呟くと、小鳥も嬉しそうにピチピチと鳴いた。最近よく見る顔だから愛着が湧いたのだろうか。 部屋の真ん中の二人用のテーブル。 食器棚には二枚の皿。 外にかけられた洗濯物には二つの背番号が隣合わせではためいている。 「また見てんの。」 いつの間にか後ろに立っていた岩ちゃんが、寝癖を立たせながら小鳥を眺める俺を呆れたように見ていた。 「へへ、岩ちゃん、おはよう。この子ぴーすけって名前付けようと思うんだけどどう思う!?」 「なんでもいいんじゃねーの。」 ぶっきらぼうに言うけど、ちゃんと返してくれる岩ちゃんに、「相変わらず俺のこと好きだね。」とからかうと、「うるせー。」と不貞腐れる。 優しい岩ちゃんは、否定しないしそんな様子はむしろ照れているようで嬉しい。 笑っていると岩ちゃんは部屋に早足で戻ってしまった。 「岩ちゃん、大好き。」 誰もいないリビングで、窓にはまだ鳥がいて、岩ちゃんは部屋に帰っちゃったけどキラキラした朝日もあって。 「あっ」 パタパタと羽ばたいてどこかに行ってしまった小鳥を少し残念に思いながら見送る。 岩ちゃんの好きなものを作ろうとキッチンに立った。 「岩ちゃん、朝ごはんできたよ。」 部屋をノックして岩ちゃんが出てくるのを待つ。 「ん〜」 また寝ているのかと肩を落とす。 「及川さんが入っちゃうよー」 そう言ってドアノブを回すと、案の定ベッドで毛布を被っている岩ちゃんがいる。 「岩ちゃん!朝ごはん出来てるのに、早く食べないと冷めちゃう。」 ゆらゆらと揺らすけど、寝起きの悪い岩ちゃんは起きたくないのかさらに布団を深くかぶる。 「岩ちゃんってば、うわっ」 思い切り腕を引っ張られ、ベッドに引き込まれる。 「うるせぇ。眠いから寝させろ。及川も俺の隣で寝てろ。」 そう言い切ってまた寝た岩ちゃん。 諦めて岩ちゃんの胸に擦り寄った。 「あー、幸せ。」 うるさく鳴く鳥が嫌いだった。 毎日毎日繰り返されるつまらない日々。 酷くいらつく自分は、心にぽっかり穴が空いていて。 大好きなバレーも、柔らかい女の子のそばにいてもいつも何かが足りない。 でも今は。そんな俺は。 世界の全てが愛おしいと思うほど幸せです。 ───────────────────── 愛、屋烏に及ぶ・・・人を激しく真剣に愛すると、その愛する人が住んでいる家の屋根に留まっている鳥をも愛するようになる。つまり、愛する相手自身だけでなくその人に関係する全てのものに愛情を注ぐようになること。 Copyright (C) 2009-2015 ことわざ辞典より

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