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時計の数字はなぜ24までじゃないのか

高校二年春の岩泉×及川 岩泉ver. 「ねぇ、岩ちゃん。なんで1日って24時間あるんだと思う?」 学校の昼休み。 購買のパンを机に並べながら、及川は唐突にそんなことを言った。 「1日が24時間だからじゃねーの。」 「全然答えになってないんだけど!?」 大声で机を叩いて立ち上がる及川を「うるさい。」と一蹴し、及川も静かになる。 「時計の数字は12までしかないのにさ、デジタル時計とかは24時まで表示されるじゃん?不思議と思わない?」 そう言われてもあまりピンとこない。1日は24時間だからとしか言いようがない。 「岩ちゃんもまだまだだね。及川さんが教えてあげよう!」 イラッとしたからすねを蹴ると「痛い。」と言って頬を膨らます。 「昔はさ、昼と夜の世界で、神様が違うって思われてたんだって。」 「だからなんだ。何が言いたい。」と言おうとする前に及川は言う。 「1日は長いから管理するのに忙しくて二人で割ったんだよ。」 「は?」 「一日は長いんだよ、岩ちゃん!」 何を思ったのか、半分食べていたプリンパンを一口で食べ尽くす。かっこよくしたつもりが、噎せて咳き込むからかえってダサい。 「一分一秒が大切で、高校生活はあと二年しかないんだよ。」 しらけた目で見ていると、負けじとドヤ顔でそう言って、そのまま手を引かれる。 向かった先は体育館で、早すぎる到着にまた誰もいない。 「お前なぁ。」 「1on1やろ、岩ちゃん。」 そう屈託なく笑う及川は、楽しそうにバレーボールで一人オーバーをしている。 「おい、こい。」 打ってはトスを返され、また打つ。及川の完璧なトスに、カットに、少し腹が立つ。 「岩ちゃんこんなもんなの?まだまだ力出せるよね?」 挑戦的な目で見る及川に、上等だと強きに打つ。 打ちやすいトスに流れもいい方向へ傾く。 「あ。」 「ちょっと岩ちゃん!」 調子に乗って変な方向に打ってしまったボールを、ヘラヘラした及川が取りに走る。 それからまた同じことをしていたらガヤガヤと人が多くなってきて、そのまま昼休みが終わった。 「早かったね。」 一日が長いと言っていたけど、そうでもないんじゃないかと、及川の言葉を聞いて思った。 それに明日、明後日、いつお前が、俺がいなくなるか、そんなの誰だってわからないだろ? どれだけ長くてもそれが一瞬で終わるときだってある。 「なぁ、及川。」 体育館からの帰り道。 廊下で肩を並べながら歩く。 「時計の数字は12までしかないのに、1日に何で24時まであると思う?」 「なにそれ、さっき俺が聞いたやつじゃん。」 まぁ、今浮かんだんだけど。 俺はさ、12時までで終わった時間を、1回限りのチャンスとして神様が引き伸ばしたんじゃないかって。 「夜って何か、なんでもできる気しねぇ?」 「深夜テンションのこと?それとなんの関係があるのさ。」 つまり、1度目の12時間が終わってもお前と一緒にいたいってことですよ。

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