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温泉で いちゃいちゃ⑧
こんな感じで、どっぷりと継の執拗な愛情に包まれて…
そう、まさしく“べったり”という言葉通りに、俺から離れない継は、必要以上に俺を触りたがり、匂いを嗅ぎたがり…それが続くと俺も流石に引き始めた。
「…継?そろそろ少し離れませんか?」
「嫌だ。詩音を抱きしめて詩音を感じていたい。」
「…俺を抱きしめたままじゃ、何もできません。
この辺を散策しませんか?
閉じ籠ってばかりじゃ、お腹も空かなくて美味しいものも食べれませんよ。
もちろん、手を繋いで。ね?」
「…詩音がそうしたいなら…」
「外の空気もいいですよ。
自然の中で継と二人っきりです。」
「自然の中…二人っきり!?…うんうん、そうだな。
よし、出掛けよう!」
あれ?
変なスイッチを押した?…いや、気のせいだろう。
何故かご機嫌になった継は、さっさと着替え、俺の着替えまで手伝い始めた。
鼻歌まで飛び出した継に不信感を拭えなかったが、取り敢えず継のしたいようにさせておいた。
俺の手を取って歩き始めた継はずんずんと山道を登り、やたらと周囲を気にしている。
「継?何か気になるものでもあるのですか?」
「…い、いや、別に。熊とか蛇とかいたらどうしようかと思って…
それにしても山の空気は気持ちいいな。」
確かにそんなものに出くわすのは避けたい。
それにしても、何だかはぐらかされたような…
「ええ。新鮮で美味しくて…木の一本一本にも癒されますね。
ここの旅館って、一体どこまでが敷地なんでしょう…
かなりの面積があるみたいですけど。」
「ここらへん一体の山は全てそうらしいぞ。
んー、ここら辺でいいか…」
ん?何がいいの?
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