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温泉で いちゃいちゃ⑦

「あっ、ごめんなさい…偉そうに言っちゃって…」 「いいや、うれしかったぞ。 俺にあんな風に言えるのは、ごく僅かな人達だけだから。 詩音が言ってくれたってことは、俺のことをいろんな地位や立場に関係なく真剣に思ってくれてるってことだからな。 俺の大事な嫁さん、これからも頼むよ。」 「…はい。」 「それと…子供のことだけどな。」 俺はびくっと反応してしまった。 継はそんな俺の頬を優しく撫でながら 「さっきも言ったけど、これは授かりものだからプレッシャーに思う必要はない。 新婚だからって、あちこちから言われることもあるだろうけど気にするな。 何か言われたら 『授かりものですから。』 って笑っとけ。 俺はな、もしできたとしても、αじゃなきゃとかそんな考えは全くないから。 αだろうがΩであろうが、男でも女でも、元気ならばそれでいい。 αならそれ相応の教育を受けさせて、できればこの会社を継がせたい。嫌だと言えば違う道へ進めばいい。 Ωなら大切に守って、その子が愛する人の元へ嫁がせよう。 お前の両親がたっぷりと愛情を込めて育てたようにな。 子供ができなくても、いつまでも二人で新婚気分が満喫できる。 どっちに転んでも、俺はお前がいたらそれでいいんだ。 あぁ…詩音、もう泣くな。 本当に泣き虫だなぁ…身体中の水分がなくなっちまう。 よしよし…いい子だ…もっとこっちにおいで。」 この人は…どうして俺のほしい言葉をさり気なく言ってくるのだろう。 不安な気持ちが一つずつポロリポロリと剥がれていく。 えぐえぐと泣きながら、甘い匂いの胸に縋り付いてしばらく涙を零していた。

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