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落ち込みside:継①

詩音が激しく落ち込んでいる。 不安、焦り、悲しみ、諦め…どうしようもない負の感情。 詩音自身が、どうしていいのかわからず自分の感情を持て余している。 一旦は俺の言葉に頷いてくれた。 けれど、どうだ? なぜ泣く? 泣くほど嫌なのか… 仕方がない。 嫌なものを無理矢理にしたって、しこりが残るだけだ。 詩音の嫌がることはしたくない。 俺の熱い想いをみんなに改めて聞いてもらえるいいチャンスだったんだが… …延期…しかないだろう。 泣き止むのを待ってキスを一つ落として、部屋を出た。 腑に落ちないことがあって、確認したかった。 書斎に入り、電話をする。 困った時の“あの人”に。 トゥルルル トゥルルル トゥルルル 「はい、伊織です。」 「遅くに申し訳ありません、継です。」 「やぁ、継君、元気?詩音君は?」 「そのことで…今よろしいですか?」 「また問題勃発かな?いいよ、どうしたの?」 「詩音が…結婚式を挙げたくないと言い出して…もう、延期しかないかと。」 「…ふーん…詩音君、どうしてるの?」 「一旦は納得してくれたと思ったんですが、また泣き始めて。 今は休んでます。 自分でもどうしていいのかわからない感じで… 持て余してるとでもいうのか。 元々派手なことは苦手ですし、挙式も本当に身内だけで行うようにしてるんです。 それなのに、泣くほど嫌だなんて…」 「…うーん、それ、マリッジブルーじゃないかな?」 「マリッジブルー?」 「うん。結婚に伴ってのいろんな環境の変化や将来の不安、焦燥。そこから逃げ出したいとか放り投げたいとか思っちゃうんだ。理由はまだいろいろあるよ。 それで鬱になったり破談にまでいってしまうこともあるんだ。 でも、継君のことは拒絶しないんでしょ?」 「ええ。とりあえずは拒否されてません。」

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