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穏やかな日に①
ある晴れた日。
麻生田家は、継一家が朝からドタバタと大騒ぎだった。
「おーい、しおーん、出掛けるぞ!
仁!お着替え終わったか?」
「うん!ぱぁぱ!おくつはいたよー!はやくー!」
「はーい!後は涼だけ…よいしょっ、と…」
「まーちゃ、いってきまーす!」
「お義母さん、行ってきます!」
「はいはーい!行ってらっしゃーい!」
ベビーカーを車に乗せて、お弁当の入ったバスケットも乗せて…
「まぁま、ぼくひとりでできる!」
仁はチャイルドシートによじ登ると、得意げにカチリとロックをした。
「うわぁ、すごいね、仁!
またひとつできることが増えたんだね。」
頭を撫でてやると
「だってぼく、おにいちゃんだから!」
涼をシートに座らせると、仁は
「ねー、りょう。」
と涼のほっぺたにキスをした。
ふふっ。キス魔なのはパパに似たのかな。
「詩音、忘れ物ないか?」
「はい、大丈夫です!」
「あ、忘れてた。」
ちゅっ♡
子供達に見えないように背中を向けて俺を隠すと、キスされた。
「継っ!」
「ははっ。いいじゃないか、これくらい。」
「だってこんなとこで…仁が真似するんですっ!」
「両親の仲が良いのはいいことだろ?
さぁ、乗って。出発するよ。」
少しむくれた俺をエスコートして、ミニバンの
助手席のドアを閉めると、継が運転席に乗り込んできた。
「ぱぁぱ、しゅっぱーーーつ!」
「あいあいあーーー!」
後ろから仁と涼の元気な声が聞こえた。
「はい、じゃあ出発ね。
パパ、安全運転でお願いします。」
「オッケー!じゃあ、出発するぞ!」
子供達の元気な声に機嫌を直して、端正な横顔をそっと盗み見る。
相変わらずのカッコよさ。ズルい。
何をやってもサマになる、俺の愛しの番。
ふわん
はっ、いけない!思わず甘い匂いが出てしまった。
慌てて窓を開けて誤魔化した。
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