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穏やかな日に④

その後も何度も継にかけっこを挑んでは撃沈していた仁は、ついに泣き出した。 そんな仁に目線を合わせた継は 「これから先、自分が頑張っても思うようにならないことが山程出てくる。 辛くて泣きたいこともな。 悔しくて誰を憎んだり恨んだりすることもある。 落ち込むことも。 でも。 真っ直ぐ前を向いて、世間に恥じない生き方をしていれば、いつか必ず報われる日が来る。 助けてくれる誰かが出てくる。 悔しければ泣けばいい。 たくさん泣いたら…笑え。 笑顔が溢れるところには幸せが寄ってくるんだ。」 そう言って、継は仁の涙をぐいっと拭き取った。 仁にとっては難しい言葉の羅列なのに、仁は継の目を見つめてしっかりと聞いていた。 そして、俺のところに飛んでくると抱きついてきた。 「まぁま…」 小さな身体を抱きしめながら継を見ると、照れ臭そうにウインクした。俺も“分かってる”と笑顔で頷き返した。 あぁ、きっと継もお義父さんに同じようなことを言われてきたんだろうな。 「まんまー、まんまー!」 「涼、もうお腹空いたの?」 「ぼくも!たくさんはしったからおなかすいた!」 「詩音、実は俺も。」 くすくす笑いながら早速お弁当を広げ、はらぺこ狼達に振舞うと、あっという間にデザートまで平らげ空っぽになった。 お腹が一杯で満足したのか、涼はベビーカーで、仁はシートの上に丸まって寝息を立てて眠ってしまった。それぞれにブランケットをかけて座り直すと 「詩音、ちょっと膝貸して。」 一番の甘えたさんが擦り寄ってきた。 継、愛してます…その思いは甘い匂いとなり、風に舞い散っていく。 突然首を引き寄せられ、唇に濃厚なキス! 「…知ってるよ。俺も愛してるから。」 慌てふためく俺をよそに、悠然と膝を独占した狼は静かな寝息を立て始めたのだった。 優しく流れる愛おしい時間。 どうかこの幸せが続きますように。 どうか俺達に繋がる人達にも届きますように。

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