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穏やかな日に③
俺は涼をおんぶし、お弁当をベビーカーに乗せて押していく。道がガタガタだったので、急遽ベビーカーは荷物運びの道具と化した。
継が仁を抱いて並んで歩く。
そのうち自分で歩きたくなった仁を降ろし、ゆっくりと着いて行く。
継がベビーカーを受け取り押してくれた。
さり気なく繋がれる手がうれしくて顔が綻んでしまう。
穏やかに流れる時間。
爽やかな風が吹く。
「まぁまー、こっちー!」
「はーい!待っててねー!」
お出掛けが嬉しくて堪らない仁は、木陰を見つけてぴょんぴょん跳ねていた。
木漏れ日がキラキラと降り注ぎ、仁を照らす。
それに気付いた仁が両手を広げ、その光を捕まえようとしていた。
背中の涼も一緒になって手を伸ばし、移動する光を捕まえようとしていた。
「こら、涼、暴れないで。」
げしげしと蹴られる背中の痛みに耐えかね涼を降ろそうとした時、不意に胸のロックを外され、背中が軽くなった。
あ…
きゃいきゃいはしゃぐ涼を軽々と抱き上げ、俺の番が微笑んでいる。
「こら坊主!いい子にしないと食っちまうぞ!」
叱られているとも知らず、涼が笑う。
継の足元に、仁が纏わり付いてはしゃいでいる。
「詩音、シート敷いてくれる?」
その声にハッとして慌ててレジャーシートを敷いて、飛ばないように四隅を荷物で押さえた。
「ありがとう。」
髪の毛にキスが降ってくる。
だから…
子供達の前では止めてって言ってるのに。
継は涼や仁の頬っぺたにもキスをすると
「仁、あそこの木まで競争するか?」
「うん!まけない!」
「よし!じゃあ、よーい…ドン!」
継は涼を抱えたまま、余裕で先にゴールした。
遠目から見ても、仁は悔しそうだ。
ふふっ。まだまだパパには追いつけないよ。
でも、いつか、パパを追い越す日が来る。
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