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第1話
桜吹雪が舞って心地良い春風がそよぐ。
夏はまだまだと来ないのに、自身の内側から湧き出る体温のせいで熱く上昇していた。
場所は砂利が敷かれた体育館裏。
時刻は昼休みが終わる十分前。
昼飯は喉も通らなかったが、緊張と余裕のない気持ちのせいで空腹感を満たしている。
小泉志津 は、一世一代の告白をしようとその相手を待っていた。
背後からこちらに向かってくる足音が聞こえて、心拍数は一気に上がる。
砂利を踏み鳴らす音が完全に止まり、志津は震えそうになる声を抑えて振り返って言った。
「好きだ。付き合ってくれ!」
ついに言ってしまった。
高校一年で同じクラスになり、いつも石鹸のようないい匂いがしてふわふわとした髪型に柔らかそうな体つき。思い切って話しかけてみると、返ってくる笑顔も可愛い女の子で一目惚れだった。
二年になるとクラスも離れて連絡先も交換出来ず、話す機会が無くなってしまい焦りを感じて告白する事に決めたのだ。
こうして話し掛けることも久しぶりで相手の子の顔をまともに見ることも出来ず、返事が返って来ることを待った。
「…いいよ。俺でよければ」
「えっ、オッケー!?って・・・!?」
野太い声に一人称、俺。
気持ちが歓喜で溢れるも束の間、恐る恐る目線を上げて志津は相手の顔を確認した。
黒縁メガネにさらさらなショートヘアー。広い肩幅に身長も幾らか自分より高く、見上げるように顔を上げた。
──ダレデスカこの男。
突然ですが、告白相手を間違えた所か彼氏が出来ました。
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