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第27話
結局結が満足して出てきたのは入ってから1時間半してからのことだった。
結は中にいた男の子と仲良くなっていたらしい。
その子に年を聞いてみると9歳らしい・・・並んでみても結と背丈が変わらないことに俺は少し心配になったが結がその子と話していて楽しそうなのを見て俺は嬉しく思ってしまっていた。
結はその子ともう少しいたそうにしているが、その子の親も俺のことを見て心配そうにしている。
俺はこんな外見だし仕方ないだろうが、心配なら心配で自分の子供くらい連れて行けよ・・・
この子供は俺を見て、かっこいい!!なんて言っているが、俺も居心地が悪い。
「あー、お前、名前は?」
「おれ!かける!」
「・・・かけるくん?そろそろお母さんの所に戻らねぇ?お母さんも困ってるしさぁ・・・」
「おれここにいたい!お兄さんといたい!」
その言葉を聞いてなんでか結が困った顔をし始めた。
俺はそっちが気になりこの子供の声なんか聞こえていない。
なんだ・・・?この子に何かされたとか?いや、でも、なにかされたなら自分から連れて来ないよな・・・でも、こいつのことだから困っていても一緒にいたりしてしまうかもしれない・・・
なんて、頭の中で考え込んでしまっていて・・・
「ぼ、ぼく・・・」
「なんだ?結」
「・・・ごめんなさい・・・」
「なに、謝ってんだよ。何も悪いことしてねーだろ?」
俺と結が話していても隣にいる子供は話を止めず気にしていないように話し続けている。
いい加減結の様子も気になるし、こいつの母親の視線も気になっているし帰ってもらいたいんだが・・・
「かけるくん、そろそろ、本当にお母さんの所に帰ろうな?お母さん心配してるぞ」
そう言って俺は話し込んでいるうちにいつの間にかベンチの隣に座っていたかけるくんの頭に手を伸ばした。
結と話しているときの癖なのかもしれない。俺も何も思わず手を伸ばしていた。
「だ、だめ・・・!」
「お、おお・・・ビビった・・・」
急に結がいつもからは想像できない速さで俺の手を掴んできた。
「結・・・くん?」
かけるくんが結を見てびっくりしているがそれは俺も同じだった。
「あ、あ・・・ごめんなさい・・・」
また結が俺の手を離してしょぼんとしてしまった。
フードコートから出て直ったと思っていたのに・・・
「ごめんな、かけるくん。お母さんの所戻ってくれ」
眉を寄せ言うとかけるくんは怖かったのか、目に涙を溜め母親がいるところへ走って行った。
母親はそれを見てこっちを睨んできたが、そんな事をするくらいなら早く連れて行ってくれればよかったんだが・・・
だが、俺は結がなんでこんなことになっているのかが気になってそんな事はどうでもよくなっていた。
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