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2恋愛恐怖症の治し方

 そんな思いを振り払うように、俺は真空君の首に手をやり、軽く笑った。  真空君は驚いたように体を震わせたが、俺がこう囁くと更に顔を赤くした。 「あーあー、あいつ、首筋にキスマークなんてつけちゃって。独占欲強いなぁ」 「えっ、そんなの今初めて……」  驚いたように尻すぼみに呟く彼。  平太のあまりの不器用さに、思わず笑った。キスマークを付けてしまうほど好きなら、さっさと告白してしまえばいいのに。 「話聞けば聞くほど不器用だねぇ、あいつ」  思わずそう吐いた。  そこでふと思い出して、こう言っておいた。 「あ、そうそう、君のことは少し気に入ったんだけど、君と平太の邪魔はしないし手も出さないから安心して。茶々は入れたいけどね、楽しいし」  実際、俺を今すぐにでも殺しそうな勢いで睨む平太は、どこか新鮮で少し、いやかなり面白い。 「……平太、お兄さんのこと散々な言い方してますけど、良い人なんですね」  少しして、心からといった調子で真空君が言った。  変な話だが、その言葉は深く俺の心を抉った。クズだと罵られる方がまだ、気が楽だと思うくらいに。  自分がどうしようもない人間なのは、自分が一番よく分かっている。分かっていて、いつも誤魔化している。  だからこそ、心から褒められると現実を叩きつけられるようで辛いのだ。 「そんなことないよ。俺はクズだよ、平太が言う通り」  茶化すように言って、気を軽くしようと努めた。真空君は腑に落ちないような様子だった。 「……おっと、これ以上真空君と話してると、そろそろ平太に殺されるや」  俺はそう無理やり話題を切り上げ、立ち上がった。  そしてわざと、何かを含んだような笑顔で平太を見た。  すると平太は案の定、俺の肩を掴んで耳元で低く聞いた。 「兄貴、今真空さんに何言ったんだよ」  俺はにやっと笑うと、「さあね?」と肩を竦めた。答えてやる気はさらさらない。 「じゃ、俺は邪魔だろうからどっかに消えておくよ」  俺はそのまま、何も答えずにドアを開け、外へ出て行った。  いつも何事にも無関心な平太がここまで彼に執着するのは、面白くて仕方がない。  と同時に、羨ましいとも思った。

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