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プロローグ

 ――どうしてこんなことに。俺、明塚平太はまた、そう思いながらため息を吐いた。 「明塚、飲み物……」  先輩が手を伸ばしたのを見て、俺は机の上に置いていたコップを差し出した。中に入っていた麦茶は既に、室温と同じぬるさになっている。  先輩の声にはまだ艶っぽい吐息が混ざっていた。俺はそんな先輩の顔を、横目で伺った。  先輩は男前だ。黒い癖っ毛も、涼やかでどこか色気のある猫目も、引き締まった体とは対照的な白い肌も、綺麗だと思う。その上、スポーツ万能で喧嘩も強く、頭も育ちもいい。憧れる人が多いのもよく分かる。  ただ、決して俺のタイプではない。  俺は恋愛に全く興味がない。誘われて気が向いたら応える、その程度だ。それに、強いて言うなら俺はもっと……華奢で可愛い子が好きだ。だから先輩は、俺のタイプとは真逆と言っても過言じゃない。なのに―― 「明塚」  声をかけられ目を合わせると、先輩は問いかけてきた。 「後悔、してるのか?」 「そりゃ、まあ……こんなはずじゃなかったですし」 「……そうか」  先輩はそう言うと、手元にある麦茶に視線を落とした。  どうして俺は、この人――学園一、と言っても差し支えないほど多くの人に憧れられている先輩――を、犯すことになってしまったのだろうか。

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