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見学

自分がどうしたいのか。 これからどういう形で佳暁様との関係を、聡との関係を、四人での関係を続けていきたいのか。 ――佳暁様がオレに求めている関係を、受け入れられるかどうか。 自分なりに精一杯考えてみたのだが、結局オレは自分一人では答えを出すことが出来なかった。 佳暁様に抱いてもらった翌日いっぱいかかっても結局答えが出せなくて、その夜は佳暁様にお願いして、佳暁様の寝室には行かずに自分の部屋で一人で考えてみたがだめだった。 誰かに相談してみようかとも思ったのだが、何を相談していいのかもわからない状態で、どうしようか迷っているうちに結局また夜が来てしまった。 佳暁様が家にいるのに一緒に夜を過ごさなかったのは昨夜が初めてで、それはオレが答えを出せていない以上は仕方のないことだったのだけれど、昨夜はなんとなく寂しくて落ち着かない気分だった。 だから出来れば今夜は佳暁様の寝室に行きたかったけれど、まだどうするか答えが出ていない以上は行くわけにいかない。 やっぱり今夜も一人かと、いったんはそう思ったのだが、ふと、行為には加わらないで見学させてもらうのはどうだろうかと思いついた。 どうせ一人でぐるぐる考えても答えが出せないのだし、いつも自分が加わっていた行為を外から冷静に見せてもらうのは案外いいかもしれない。 そう考えて、オレは二階の佳暁様の寝室へと向かった。 部屋に入ると、佳暁様はまだ入浴中らしく、聡と護の二人が風呂上がりのバスローブ姿で待っていた。 俺の姿を見た聡は、何か言いたげに口を開きかけたが、結局何もいわなかった。 「どうするか、決めたのか」 黙っている聡の代わりに護がそう聞いてきたので、オレは首を横に振った。 「ううん、ごめん、まだなんだ。  色々考えたんだけど決められないから、一回三人でしてるところを見学させてもらおうと思って。  いいかな?」 「ああ、俺はかまわん」 護がうながすように聡の方をみると、聡も「いいよ」と答えた。 「あれ? 健太?」 その時、入浴を終えて部屋に入って来た佳暁様が、オレの姿を見て首をかしげた。 「すいません。  その、まだどうするかは決められてないんですけど、もし良かったら今夜は見学だけさせてもらえないかと思って。  いいでしょうか?」 「うん、もちろん。  二人もいいよね?」 佳暁様が聡と護に聞くと二人ともうなずいた。 そうしてオレは服を着たままでソファベッドに座り、三人はベッドへと移動し、いつもとは少し違う夜が始まった。 四人が三人になっても、やることはいつもとそう変わらなかった。 聡と護の二人が、佳暁様に気持ちよくなってもらうために様々な奉仕をする。 いつも佳暁様の方から何かをしてもらうことはあまりないのだが、オレたちにとっては佳暁様に喜んでもらうことが自分自身の喜びでもあったので、それを不満に思ったことはなかった。 それに実際、佳暁様が感じている姿を見ているだけでも興奮するし、佳暁様の中はすごく気持ちがよかったから、それだけで十分おつりが来るくらいだと思っていた。 佳暁様を抱いていた時は、こんなふうに離れたところから感じている佳暁様を眺めるようなことはなかった。 けれども、今日の佳暁様がいつもとは違って見えるのは、きっとそのせいだけではないと思う。 二人に抱かれて感じている佳暁様は綺麗で色っぽくて、見ているだけで自分の体が興奮して熱くなってくるのがわかる。 そしてそれは、今まで感じていた佳暁様を抱きたいという欲望からくる興奮ではなく、自分が抱かれる悦びを知ったからこそ感じる興奮のような気がする。 こうして外側から佳暁様が抱かれている姿を見て、オレはようやく、佳暁様がなぜオレが二人に抱かれている姿を見たいとおっしゃったのかがわかったような気がした。 単純に、好きな人が感じている色っぽい姿を見たいという欲求。 そして、相手にも同じように自分が感じている姿を見られているという羞恥からくる興奮。 それらに加えて、自分が感じているその目の前に同じように感じている人がいることで、まるで鏡に映る自分の姿を見ているような――そのくせ、目の前にいるのは自分ではなく好きな人だという不思議な感覚。 もし佳暁様があの時今のオレと同じように感じていたのなら、佳暁様がオレにあんな関係を望んだのはそういう理由からだったのかもしれない。 こうして佳暁様が抱かれているところを見て、自分がその目の前で同じように抱かれているのを想像しているだけで、どうしようもなく体が高ぶってくるのに、実際に抱かれたらオレはどんなふうになってしまうのだろう。 それを考えると怖い気もするけれど、また体が熱くなってくるのも事実だ。 オレの体はすっかり興奮してしまって、佳暁様が護の太いものを挿入される頃には、前が張り詰めて痛いくらいになってしまっていた。 このまま出さずにはどうにもおさまらない感じになってきたので、オレは二階のトイレに行って処理してしまおうと、そっと部屋を出た。 「健太」 前を押さえながらそろそろと歩いて、トイレのドアに手を掛けたところで、後ろから名前を呼ばれた。 思わず振り返ると、そこには素っ裸のままの聡が立っていた。 「来い」 短くそう言うと、聡はオレの手をつかんで、聡の部屋へとひっぱって行った。 「ちょ、待って、聡、やばいから」 オレは慌てて聡の手を振りほどこうとしたけれど、その暇もなく、あっという間に聡の部屋の中に引き入れられてしまった。

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