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開発 1
翌朝の朝食の席で、これからは佳暁様のおっしゃる通りの関係でやっていきたいと言うと、佳暁様は微笑んで「ありがとう」とおっしゃってくれた。
「今夜から大丈夫?」
「はい」
「じゃあ夜お風呂入る前に、準備の仕方教えるね」
「はい、お願いします」
そうか、準備があるんだった……。
想像するとちょっと気が重くはあったが、佳暁様も毎日していらっしゃることだから仕方がない。
とりあえず昼間のうちは、準備のこともその後のことも考えないようにして仕事に専念し、夜、夕食の片付けと明日の朝食の仕込みを終えてから、私室で一人で待っていらっしゃる佳暁様の元に向かった。
佳暁様はオレに準備のやり方を教えて下さると、その後、昨日聡にどんなことをされたのかと聞いてきた。
佳暁様に隠すようなことでもないかと簡単に説明しようとしたのだが、佳暁様は詳しいことが聞きたかったのか、オレが省略したところに質問を挟んできたので、結果的にかなり詳しく説明するはめになってしまって恥ずかしい思いをするはめになった。
「じゃあ、結局最後まではしなかったんだね?」
「はい。
……あの、オレちょっとひどかったですかね?」
昨夜聡は佳暁様も抱いてなかったのに、オレばっかりが気持ちよくしてもらって悪かったかなと思っていたので聞いてみると、佳暁様はくすっと笑った。
「いや、聡がお前にしたことを思えば、それくらい全然ひどくないよ。
実は一昨日お前がいなかった時も、聡には罰として入れさせなかったんだよね。
昨日素股しちゃったんならあれだけど、せっかくだしこのまま一週間くらいは禁欲しててもらおうかな」
「そ、そこまでしなくても……」
「そうかな?
何も別に自慰まで禁止するわけじゃないし、そんなにひどい罰でもないと思うけど」
そんなことを言う佳暁様は、楽しそうなくせに、やっぱりちょっと不安そうだ。
ああ、また佳暁様の悪いくせが出たなと思うと、オレはもう何も言えなかった。
「えーっと、それじゃあ準備してきますね」
「うん。
あ、慣れるまではお前が二階の浴室を使っていいよ。
最初はちょっと大変だと思うしね」
「はい、ありがとうございます」
やっぱり大変なんだ……と、また気が重くなりつつ、オレは佳暁様から必要な道具を受け取ると二階の浴室に向かった。
佳暁様がおっしゃった通り、自分の体の準備をするのは結構大変だった。
若干ふらふらしながら佳暁様の寝室に向かうと、佳暁様は慣れているだけあって先に一階での入浴を終えベッドに座っていた。
二人で話をしているうちに聡と護もやってきたので、いつものように四人で服を脱いでベッドに上がった。
「あ、そうだ。
聡は罰として一週間は入れちゃだめだからね。
今まで三日は禁欲してたから、あと四日ね」
佳暁様がそう言うと、聡は神妙な顔で「はい」とうなずいた。
そう言えば、聡が挿入できないということは、代わりに今日は護がオレに入れるんだろうか。
それはまだなんとなく不安だし、今日も佳暁様が入れてくれるといいな、などと考えていると、佳暁様が「それと健太」と言い出した。
考え事をして気がそれていたせいで、思わず「はいっ!」と大きすぎる返事をすると、佳暁様はちょっと笑った。
「あのね、あんなことがあったせいで、お前はいきなりアナルセックスしてしまったけれど、本当はペニスを入れる前にアナルを拡張した方がいいんだ」
「拡張……ですか?」
「うん、そう。
本当は一ヶ月くらいかけて徐々に広げていった方が危険も少ないし、そのままするより拡張してからの方がずっと気持ちいいんだよね。
だから今更かもしれないけど、健太にもこれを使って拡張してもらおうかと思って」
そう言うと佳暁様はよく利用している通販の段ボールを出してきた。
あ、あれ、今日の夕方、当日配達便で届いたやつだ……。
どうやら佳暁様は朝オレの返事を聞いてすぐその道具を注文してくれたらしい。
すでに開封済みのその段ボールから出てきたのは、スペード型を立体にしたような少しずつ大きさが違う五つのシリコン製の道具で、アナルプラグというのだと佳暁様が教えてくれた。
「これをセックスの時や寝る時、普段生活してる時につけて、一番小さいものから少しずつ大きくしていくんだ。
健太は最初から痛みはなかったようだし、一ヶ月はかけなくてもいいかもしれないね。
どう? やってくれる?」
オレが入れたことのあるものに比べたらずっと小さい道具ではあるけれども、セックスの時だけならまだしも、これを寝る時や普段にも入れるのかと思うとめまいがしそうだ。
けれども佳暁様はご自身も経験したかのような口ぶりで話しておられて、佳暁様も過去に同じように拡張した――いや、おそらくは『させられた』のだと想像出来てしまって、それに気付いたオレは迷うことなくうなずいていた。
「ありがとう。
それじゃ、とにかくやってみようか。
もし途中で嫌だと思ったら、我慢しないで言うんだよ。
健太には嫌な思いをさせたくないからね」
佳暁様の言葉にまた、佳暁様が受けた過去の傷がちらりとかいまみえる。
こんなことを考えるのはおこがましいかもしれないけれど、もしかしたら、オレの体がもっと気持ちよくなれるように変わることは、佳暁様の過去の傷を癒やす助けにもなるのかもしれない。
そう思うと、オレは自然に、がんばって拡張してもっと感じられる体になりたいと思うようになっていた。
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