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迷い込んだ蝶_參
恒宣は白く貧弱な体をし、丸眼鏡をしていて人のよさそうな顔をしていた。
「何だか折れてしまいそうだな」
そう腰回りを撫でる様に触れれば、恒宣がビクッと体を揺らした。
「ふ、藤」
「おめぇ、剣術は習わなかったのかよ」
武家の生まれならば習わされるのではと藤が疑問に思えば、
「子供の頃は病弱でな。剣術ではなく学問を学んでおった」
「そうかい。だからこんなになまっちょろいのか」
後ろから腕を回して抱きしめる様な形となり、恒宣は体を硬くする。
「あぁ、わりぃ」
つい馴れ馴れしく触ってしまった。警戒されたかなとうかがうように見れば、特に変わった様子は無かった。
「兄や弟には少し鍛えた方が良いと言われるのだが……、やはり軟弱に見えるか?」
「う~ん、あんたには悪ぃが」
「そうか」
がっくりと肩を落とす恒宣に追い打ちをかける様に、
「まぁ、なんだ、あんたって身なりも良いからな。ゆすりには気をつけな」
カモられるぜと藤は口角を上げた。
恒宣はそれは困るなと眉を寄せ、
「その時は全力で逃げるしかないな」
と言うが、どうみても足が早そうには見えない。捕まるのがオチだろうが頑張んなと背中を叩いた。
結局、恒宣の小袖と袴は乾かず、藤の着流しを着て帰っていった。
随分とおっとりとした男だった。
共に居ても嫌じゃなかった。それ所か傍にいるだけで落ち着く程だ。
だが、それは恒宣が友好的に自分と接してくれたからだろう。だが、アレを見てしまったらどうなるだろうか。
その視線の先には一枚の絵が置かれており、描かれているのは妖艶な美女である。
ただの美人画なら別に見られても構わないが、そこに描かれているのは衿を広げて豊満な胸を晒しだし、乳房を舌で絡め取る男の絵だった。
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