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1. Rimless Free 1
「伊吹 、気持ちいい?」
ぐちゅぐちゅと派手な水音に混じって聞こえてくる声は嫌になるぐらい甘く熱っぽい。
四つん這いになって指を突っ込まれて、額をシーツに押しつけながら散々喘がされて、それでもこんなんじゃ物足りないとか思ってる自分をマジでどうかと思う。
気持ちいいに決まってんだろ、と言ってやりたいけどそんな余裕はもう全然残ってない。
「ん、あっ、あぁ……ッ」
ぐるりと中を掻き混ぜる指先が一番敏感なところを刺激する。
腰に回された腕にがっちりと動きを封じ込められて、与えられる快楽には逃げ場がない。いつものことながらびっくりするほど簡単に瀬戸際まで追い込まれていく。
「や……、イく……っ」
背中に覆い被さってきた身体の熱さを感じた途端、身体に籠っていたものが弾けてしまう。ビクビクと何度も収縮する中が咥え込む指を締めつけるのを感じながら、荒く息をついて引いていく波に身を委ねた。
「は、あ……」
ずるりと引き抜かれる感覚に情けない声が漏れる。そもそも何も入ってない状態がフツウなのに、なんでこの瞬間はこんなにも足りない気分になるんだろう。
足りない、足りない。もっと欲しい。頭の中がどんどん空っぽになっていく。
背中に触れる衣服の感触に、なんで俺だけ裸でお前は脱いでないんだよと文句のひとつも言いたい気分だ。
「ああ、こっちはまだか」
ぐるりと身体を反転させられて、いとも容易く組み敷かれる。レンズ越しに見下ろす視線の先には、今にも破裂しそうなぐらい張り詰めた俺の半身が心許なく揺れていた。
そう、こっちはまだだから苦しいんだって。わかってるくせに。こんな時こそ意地悪なのも海里の専売特許だ。
「海里 、早く」
腕を伸ばして一言そうねだれば、少し前屈みになってくれる。ようやく届いた眼鏡のフレームに指を掛けてそっと外してしまえば、その下から俺の大好きな素顔が現われた。
縁のないこの眼鏡をリムレスと呼ぶんだって教えてもらったのはいつだっただろう。
いや。いつ、どっちが、教えてくれた?
いろんな記憶が時折ごちゃ混ぜになるのは、お互いの家が向かい同士で俺たちが幼馴染みで、しかも海里には双子の兄がいるからだ。
ドクドクと鳴る心臓の音がうるさい。眼鏡を枕元に置いて首の後ろに手を回し、こちら側に頭を引き寄せる。触れ合う唇がもどかしさを感じる前に、舌を差し伸ばして唇の隙間から侵入していく。
口の中って何でこんなに熱いんだろう。捕らえたはずの舌先はぬるりと逃げて、今度はこっちに入ってくる。歯列をなぞり、上顎をくすぐられて、攻めたつもりがいつの間にか逆転してる。いつも主導権を握ってくるところが気に喰わない。
腹立ち紛れに両手を伸ばして海里の着ているシャツのボタンを外していけば、ゆっくりと唇が離れていった。絡み合う視線の先にあるのは憎らしいぐらい愉しそうな微笑み。
「がっつくなよ、エロガキ」
「うるさい、不良公務員」
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