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1. Rimless Free 2
本当に憎らしくて最低な奴だとつくづく思う。このきれいな顔とふてぶてしい性格で、今就いてる仕事が役所の窓口サービスだっていうんだから世の中は間違ってる。だって地方公務員って、お硬くて真面目な人だけがなれる職業なんじゃないのか?
市民に対して適当に愛想を振りまきながら、戸籍謄本だとか住民票の写しだとかを交付するのが海里の仕事らしい。することはそれだけじゃないって言うんだけど、俺はお役所仕事には別に興味もないし、正直海里がどこで何をしていようとどうでもいい。
自分が窓口に立つと回転率が悪くなるというのが海里の言い分だ。何だよ、それ。そういうところもマジでムカつく。
ぼんやりとそんなことを考えてる間に着ているものを全部脱いだ海里が、濡れた瞳で静かに俺を見下ろす。ああ、悔しいけどその顔はやっぱり好きだ。
両脚を掲げられ、ぬるりと後孔に先端があてがわれる感覚に息をつく。たったそれだけで身体の内側が痺れたように疼く。パブロフの犬と一緒だ。俺がこのイケ好かない幼馴染みの掌の上で転がされてきたことで培われてしまった、悪しき条件反射。
「あ、早く……」
ふくらはぎに唇を押しあてられて、チクリと刺すような痛みを覚える。妙な痕を付けたらあとで怒るからな、と心の片隅で唱えた文句は与えられた快楽に流されてすぐに立ち消えた。
「──あ、あぁ……ッ」
ずん、と勢いよく奥まで貫かれて腰が砕けそうなぐらいに感じてしまう。息をつく隙もなくリズミカルに揺さぶられて、思わず閉じてしまった目を必死に開けて両腕を伸ばす。
前屈みになったその背中に腕を回して抱きついて、不自然な体勢でガンガン突かれる度に抑えきれない上擦った声がこぼれてしまう。
擦れる部分からゾクゾクとしたどうしようもないほど痺れた感覚が生まれて、気持ちよさに頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。ぼんやりとした意識に乗せて口にするのは、バカみたいな告白。
「……バンリ、好き、万里……」
ああ、本当にバカみたいだ。顔が同じだっていうだけで中身は違う人間なのに。
俺は海里をこうして行き場のない想いの捌け口に利用してる。
「ん、好きだよ。伊吹」
適当に合わせてそう言ってくれてるだけだ。そんなことは俺にだってわかってる。なのに、吐息交じりに耳元でそう囁かれることが嬉しくてたまらない。
回した腕をほんの少し緩めてからまたしっかりと抱きつく。触れ合う肌を重ね直した途端、俺は堪え切れず半身から熱を迸しらせていた。
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