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Lv.1ケント

ケントは麻の混じったごわごわした手触りの、着心地も見目も決して上等とは言い難い白のローブを頭からすっぽり被り、辺りをきょろきょろと見回した。 辺りには、鈍い輝きを放つ甲冑の鎧に光沢のある特殊な糸で織られたであろう上質なローブを身に付けた人々が護身用の武器を手に、仲間や仕事を探している。 その傍らで大仕事にこれから挑むのか、酒を片手に決起集会を開いている人々もいる。 そして仕事が成功したのだろう勝利の祝杯を上げる人々も。 ここはアンナという女主人が切り盛りする、町で一番大きな酒場だ。 金になる大きな仕事の情報は自然とこの酒場へ集まる為、懸賞金と名声を求める勇者達がここぞとばかりに集う。 慣れない酒場の雰囲気に怖じ気づきながらもケントは仕事を探す為、壁の貼り紙を目を皿のようにして見詰める。 「あ……これなら俺でもやれるかなぁ。イジー草原で穀物を食い荒らすネズミ退治。ネズミの皮5枚につき10ベルもらえるのか」 貼り紙を食い入るように見詰めているケントは、ケガなどの治癒を得意とする癒し専門の魔導師で俗にヒーラーと呼ばれる職についていた。 この世界へ足を踏み入れたばかりの駆け出し冒険者である。 この時ケントの持ち物は、少しの金と白のローブ、かじりかけのパンだけだった。 これではネズミ退治もままならないだろう。 何か武器が必要だ。 「武器屋に行かなきゃならないのか。えっと……」 再びケントは辺りを見回した。 すると地下へと続く階段を発見し、階段手前の壁に『武器、防具店は地下へどうぞ』と案内する紙が貼ってあった。 「こっちか」 ケントは案内の示す通りに薄暗い階段を駆け下りる。 階段を下りた先にほんのりとした明かりが見えて、そこを目掛けて歩いて行った。 「わぁ……!すごい、店がいっぱいだ」 薄暗いエリアからの視界が開けた。 地下の通路沿いには道具屋、武器屋、防具屋など様々な店が軒を連ね並んでいた。 店だけでなく人も溢れ、この酒場は地下までもが活気づいている。 「お嬢ちゃん!魔導師のローブ、新商品入荷したよ!安くしとくよ。見てってくんな!」 防具を専門に取り扱う店の店主がケントに声をかける。 「お嬢ちゃんじゃないし」 ケントはぼそっと呟いて、頭からすっぽり被っていたローブのフードを取り払った。

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