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第137話

「本当は昨日のうちに話しておきたかったんだが、寝込んでんじゃねえかと思って後回しになっちまった」 宗太はそう言って、健人を抱いたまま地面へ座る。 温かい。宗太と接触している部分がとても温かく感じてほっとした。 「話がわかんないんだけど、何かあった?」 宗太を見詰め、神戸、和也、黒川に視線を走らせる。 「面白いことが始まるんだ。健人のハマってるゲームより面白いことかもしれないぜ」 にっと笑いながら和也が言った。 lostworldよりも面白いことって何だろう? くるりと見回して、もう一度宗太を見る。すると宗太が口を開いた。 「次期生徒会を俺達が仕切る。健人、あんたもだ」 「……は、……え?」 突然のことに思考が追い付かない。 なんで?意味がわからない。 この大きな学園で生徒会と言ったら、皆漫画みたいに美形揃いで生徒達に崇拝されるような出来た人間の集まりだ。 宗太はそこへ殴り込みに行くと言っているのだろうか。 口を開いたまま、ポカンとしている健人に宗太が続ける。 実は宗太は学園理事長の息子であり、跡継ぎであること。 この学園を知るためにまず学園を取り仕切る生徒会を運営するのが理事長との約束だということ。 ……そして、宗太が選んだメンバーがこの5人だということ。 宗太がこの事実をかいつまんで説明した。 健人はしばらくぼうっとしながら、理解の追いつかない宗太の言葉を頭の中で整理した。 「急な話で悪いと思ってる。でもあんたと一緒なら、lostworldより楽しめるんじゃねえかって……。やってほしい。ダメか?」 確かに急な話だ。 口では悪いと思ってると言っているが、悪びれた顔など一切せずに、考える暇すら与えない超然とした雰囲気。 その姿はまるで上司か王様だ。 それすら無意識でやっているのなら、こいつはどの世界にいても俺様でキングなのだろう。 「……ダメも何も、俺にノーと言う選択肢を与えないつもりなんだろ。俺だけじゃない。ここにいるメンバー皆、素直に生徒会に入るなんて変だ。何か見返りでもあるんじゃないのか」 「するどいね、筑波先輩。各々将来的に進みたい道やら欲しいコネやら色々あってな。生徒会やっとけば大体が優遇されるって話だ」 神戸が裏を見抜いた健人に驚いた様子でおどけて言った。 「俺の贖罪はまだ済んでませんから。筑波先輩に尽くすつもりです」 その隣で黒川が健人を見て微笑みながら口を開く。 神戸の話を聞いてやっぱりそうか、と健人は思った。 だがそれだって優秀な人材を集めるためのノウハウの一つだ。 それでここにいる全員を納得させるんだから宗太はやっぱり上に立つのが向いているのだろう。 これだって間違いなく宗太のカリスマ性であり魅力の一つだ。 「健人……、俺についてきて欲しい」 健人を見つめる宗太の目は真剣そのものだ。 ─抗えない。 「lostworldよりも面白いことなんてそう滅多にあるもんじゃないよな。仕方ないな、宗太についてくよ」 健人の瞳は真っ直ぐに宗太を見詰める。 「ありがとな、健人」 嬉しそうに宗太の唇がキレイな弧を描く。 その後チュッと派手なリップ音を立てて宗太が健人にキスをした。 「だからーっ!お前こんなとこで、やめろよなっ」 寒空の下、乾いた空気の中で、皆の笑い声が響いた。 -end-

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