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第135話
「 帳さん、今晩僕に付き合ってもらえませんか?」
そろそろ書類の整理が粗方終わりそうになった時間に馨が耳元で囁いた。
「 う、うん 」
こちらには全く断る理由もない。一緒に居られる時間が増えるのはただただ嬉しいことだった。
会社を別々に出ると一駅先の遅くまで開いているカフェで待ち合わせをする。
そんなことすら、秘密の逢瀬をしているようでドキドキする自分に、どこまで遅く花開いた本物の恋に初心なんだと苦笑が漏れる。
この幸せを守る為にあの二人の呪縛からなんとか逃れないと……
二人で一緒にマンションまで帰ってくる。エレベーターの中でそっと指を絡ませられると今夜への熱い期待で込み上げて来た高揚感を唇を噛み締めて抑え込む。
抱かれなれた淫猥な身体は、馨の雄の匂いを嗅ぎとると下腹に重く蕩けるような欲を鎮め込んだ。
欲しい……この男が欲しい。
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