30 / 165

第30話

心配そうに僕を見ている新谷君に気付いてはっとする。 いけない、慌てて取り繕う。 「新谷君おはよう」 「あ、おはよう、ございます…、あの帷さん」 「ん?」  新谷君は何かを探るように僕を見たあと、しかし首を横に振った。 「……いえ、何でも」  そんなやり取りをしているうちに、ざわめいていた心も落ち着いてきた。 「新谷君、あのさ」 「はい?」 「ありがとう」 「何ですか急に」 意味が分からないよな、これじゃ。でも今はそれでいい。 「いや、何となく?」  新谷君といると安心する、なんていつか言える日が来るのだろうか―ー

ともだちにシェアしよう!