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第30話
心配そうに僕を見ている新谷君に気付いてはっとする。
いけない、慌てて取り繕う。
「新谷君おはよう」
「あ、おはよう、ございます…、あの帷さん」
「ん?」
新谷君は何かを探るように僕を見たあと、しかし首を横に振った。
「……いえ、何でも」
そんなやり取りをしているうちに、ざわめいていた心も落ち着いてきた。
「新谷君、あのさ」
「はい?」
「ありがとう」
「何ですか急に」
意味が分からないよな、これじゃ。でも今はそれでいい。
「いや、何となく?」
新谷君といると安心する、なんていつか言える日が来るのだろうか―ー
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