63 / 165
第64話
「いらっしゃい、玲」
店内に入った僕を出迎えたのは南雲さんだった。
カウンター席に座って水割りを飲んでいた南雲さんの他には、店内には誰一人いない。
「すいません、お待たせしました」
南雲さんに謝りながらも、他に客がいないのはともかくとして、店員はどうしたのだろうかとカウンターの奥の厨房の様子をうかがっている僕を見て、南雲さんはちょっと笑った。
「俺たち3人しかいないぜ。
ここ、俺の知り合いがやってる店で、今日はちょうど定休日だから場所を借りたんだ」
嫌な予感がして思わず後ずさりした僕は、遅れて入ってきた的場さんにぶつかってしまう。
振り返って見ると、的場さんの手にはさっき入ってきたドアにかかっていた「Open」のプレートがあった。
「ま、そういうわけ。
玲だって俺たちに呼ばれておとなしく来たんだから、楽しく飲む以上のことも期待してくれているだろうけど、万が一途中で逃げられたら嫌だから、一応ね」
ともだちにシェアしよう!