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第64話

「いらっしゃい、玲」 店内に入った僕を出迎えたのは南雲さんだった。 カウンター席に座って水割りを飲んでいた南雲さんの他には、店内には誰一人いない。 「すいません、お待たせしました」 南雲さんに謝りながらも、他に客がいないのはともかくとして、店員はどうしたのだろうかとカウンターの奥の厨房の様子をうかがっている僕を見て、南雲さんはちょっと笑った。 「俺たち3人しかいないぜ。  ここ、俺の知り合いがやってる店で、今日はちょうど定休日だから場所を借りたんだ」 嫌な予感がして思わず後ずさりした僕は、遅れて入ってきた的場さんにぶつかってしまう。 振り返って見ると、的場さんの手にはさっき入ってきたドアにかかっていた「Open」のプレートがあった。 「ま、そういうわけ。  玲だって俺たちに呼ばれておとなしく来たんだから、楽しく飲む以上のことも期待してくれているだろうけど、万が一途中で逃げられたら嫌だから、一応ね」

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