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第66話
もうあんな事はしない。
快楽に流される事で、正気を保とうとする、あんなやり方はーー。
けれど、体が動かない。
まるど床に縫い付けられたかのように、足は動かず。ただ、腹の奥から、よく知った熱いマグマが身体中を蝕んでいく。
南雲さんの端整な顔が、近づいてくる。強い眼差しに、視線が逸らせない。
クッと彼の喉が鳴った。
きっと僕が怯えたような、けれど、熱を孕んだ瞳で見つめていたから。彼はよく、その瞳が最高だと昔、言っていた。
唇が重なる。
「ン…っ」
ピクリと指先が跳ねる。咄嗟に後ろに体を引くものの、的場さんが僕の体を捕まえた。
「…逃がさないよ?」
耳元でトロリとした雄の囁きが注ぎ込まれる。
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