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第56話
昨夜遅くやっと事務処理が全て終了。
俺は院長秘書の橘さんに連休明けの5月中頃
NYへ発ちたい旨を告げ、その希望通りの航空券を
発券手続きをしてもらった。
「―― 短い間でしたが色々お世話になりました」
「あぁ、体に気を付けて、アメリカでも頑張れよ。
あ、それと大吾に宜しく」
「はい、伝えます」
今日は1日、各診療科の先生方への挨拶回りで
明け暮れ。
夕方過ぎ、馴染みの居酒屋であつしと落ち合った。
利沙は出張で欠席。
「―― おばちゃ~ん? 生大2つ追加ぁ!」
「あいよ~」
「……そっかぁ、いよいよ行っちまうか……」
「うん……」
「あ、向こうで合コン開けよ。で、俺にも金髪の
可愛子ちゃん紹介して」
「お前な……そんな事だから小夜ちゃんと
喧嘩するんだよ」
店のおばちゃんが追加の生を持って来た。
「はいよ、お待たせー。これはおばちゃんからの奢り」
「え~、おばちゃん、ありがとね~」
「大吾先生に続いて倫ちゃんまで行っちゃうとなると、
急に寂しくなるわねぇ」
「なーに言ってんの。2年なんてあーっという間だよ。
アメリカ土産たっくさん買ってくるからね」
「そう? 楽しみにしてるわ」
おばちゃんは別の客に呼ばれて行き、
あつしはやや言いにくそうに口を開く。
「……でさ、倫」
「ん?」
「……柊二の見舞いに行って来い」
「……」
「強がりは止めろ」
「強がってなんかない。柊二ともう会わないって
決めたのは俺自身だもの」
「……お前さ、2年なんてあっという間なんて言ってる
けど、2年経っても戻らない気ぃなんじゃね?」
さすがは親友、鋭い。
「なら、尚更今会っておかなきゃお前絶対後悔する。
あのさ、倫。柊二に会うのは未練を引きずる為じゃ
なく、前に進む為だって考えろ。お前たちには必要な
ハズだ」
「おれ、達……」
「柊二が退院したら、そう簡単には会えなくなるんだから」
「……」
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