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パートナー 邂逅編 最終話 ・ ②

「は、あン……」 「可愛い……どうしよう倫、お前めっちゃ可愛すぎ」   声は熱い吐息交じりに掠れているのに、   潤んだ視界に映る端整な顔はセッ*スの最中なんて   思えない程、禁欲的に引き締ったまま。    ただ、前髪が乱れて秀でた額を覆う。   乱れて浅ましく欲しがっているのは、   俺だけなんじゃないかと   疑ってしまうぐらい、普通で ──。   身が竦むぐらい恥ずかしいのに、   その恥ずかしさにまで煽られて、   ── ソコが、熱くぴくぴくと催促する。 「りんたろ、そんなに欲しい? オレが欲しい?」   答えの代わりに、後ろ手に柊二のモノを掴み、   上下にさすりながら、自ら、その部分に当てがった。   こんなふうにソレを欲しがるのは、男としてどうかって、   悩まないでもないけど。   ……でも、そうなるように望んだのは、柊二だ。   だから ── 倫太朗は諾々と、   その変化を受け入れる、   柊二が望んでくれる限り。 「行くよ」   こくんと頷けば、それが合図。   シーツを鷲掴みにしながらも、腕で体を支える事の   できなくなった倫太朗の腰だけを高く掲げて、   柊二は今度は一気に、根元まで使って犯した。 「あ───ああああああ……ぁぁぁ…………!」   期待以上の、物凄い快感が、   頭の天辺から脚の爪先まで   電撃のように走った。   倫太朗は貫かれた姿勢のまま、   びくびくと体を痙攣させて硬直し、   知らず思い切り後口を締め上げた。 「うわッ! 」   ぶるっと柊二が背中で震えるのが分かったが、   流石に、ギリギリのところで持ちこたえたらしい。   ふうっと、安堵にも似た溜息が項にかかる。 「……も……ひでぇな……危なかった、オレ、  中坊の童*みたいじゃない」   柊二は後ろから倫太朗を抱きしめ、   耳元でくすくすと笑った。   いつも、どうしてもある挿入の衝撃から、   そこが彼の形に馴染んで落ち着くまで、   辛抱強く待っていてくれる。   ただ、手持ち無沙汰なのだろう、   その間、胸の左右につんと立つ乳*を、   親指と人差し指でつまんだり   引っ張ったりして遊ぶのも、柊二の癖だ。 「あ、あ、……やだ、ねえ、もうそこ、  痛いからだめっ……」 「痛い?  あー、やばい、オレ、触りすぎた?」   ごめんねと真面目に謝る彼に、   倫太朗は頷いて苦笑い。   だって、エッチはとんとご無沙汰だったのに、       さっきから、すんごくしつこく舐められたり   甘噛みされたりで。   抗議のつもりで柊二と繋がる場所に、   ぎゅっと力を込めたら、   柊二が後ろでウッと唸った。 「……ねぇ、もう動いてい?」   余裕なさげなセリフに、   倫太朗はちょっと笑って、どうぞと言った。   欲しがっているのは自分だけじゃない事に、   ちょっと安堵して。   柊二がせわしなく律動を始める。   潤滑剤と互いの下半身を汚す先走りのせいで、   ぐちゅりぐちゅりと濡れた音が始まる。   欲しかったものが、急速に与えられる。 「んふっ、ん、あっ、……いっ、いい、いいっ……!」 「あぁ……オレもすっごく気持ちいい」   ベッドに埋もれた初めから、   嘘も見栄も意地もとうにない。   空虚な内部を満たす、たっぷりとした質量。 「あン……しゅじ、しゅじ、好き、大好きぃ……っ!」   熟れた内壁を擦られ、むずがゆさが消える。   ポイントを突かれ、思わず背がしなる。   倫太朗の薄い腹に触れば、   柊二の形が浮かぶんじゃないかというぐらいに、   奥の奥まで串刺しにされ。 「あァっ ── ッ!」   視界が真っ白に染まった。   全身の感覚が一瞬にして消えて、   無重力に放り出されたようにふわりと体が軽くなる。   ただ、無意識に、   倫太朗は自分を責めたてるモノを締め上げ、   そのまま自分のナカで時間が止まった。   そうして、次の瞬間、一気に脱力する。   荒い息を吐き、シーツに頬を落とし、   ふと汚したはずの自らの股間を見れば。   え ──?   今、確かに、イッたと思ったのに……。   相変わらず、そこはびんと立ったまま……   根元を柊二に押さえられている。   な、何で ――? 「ドライでイくほど気持ち良かった?」   う、ん……と、ぼんやりと首を縦に振ると、   柊二はクスっと笑った。 「後ろだけでイッくれるなんて、凄い嬉しいけど。  ……でも、こっちは……オレと一緒に、な?」   見せ付けるように、後ろから倫太朗の……を   上下に擦る。   それでも、さっきので僅かに漏れた体液を、   その表面に塗りつけるようにして、   掌が生き物のように動く。 「あんっ、やっ……!」 「一緒にイこう、あ、でも、……ココ、締めるのは、  手加減な」   無茶なことを言って、柊二がまた激しく動き始めた。   もう、柊二の意のままにしか極められなくなっている   自分の体が恨めしく ── でも、愛おしい。 「あっ、あ……んん、あっ!」      (多分、明日は、     出発準備どころではないだろうなぁ)     がくがくと両脚が震え、穿たれる衝撃に、   体がずり上がる。 「ほら、駄目だよ、逃げちゃ……」 「ごめ、んっ……あ、やだ、ねえ、……あぁ、もっと、  突い ── っ!」     柊二の腕に痛いほど腰を捕まれ、   前後に揺すられる。 「い、いやぁぁぁぁぁ! ん、んア、アァァ!」      (ちょっ ―― はげし、すぎ……)     濡れた肉のぶつかる音が激しくなり、   柊二のそれがぐんと体の中で大きさを増す。 「りんたろ、オレの……りん……愛してるよ、……  愛してる、愛してるからっ」 「ん、あっ ―― も、……バカ……ぁ……」   ハードなセッ*スの言い訳じみていて、   倫太朗は朦朧とする意識でそれを揶揄したけれど。   でもそれが恋人の本音だとちゃんと知っている。      (あぁ、もう絶対、明日は……動けないよ……)     各務柊二の専用のおもちゃのように   翻弄されている下半身を、   どこか他人事のように思いやり。   この男だけが自分に与えることのできる、   めくるめく快感に、   倫太朗は歓喜の嬌声を喉の奥から搾り出して   果てた。       それから倫太朗と柊二は夜が開けるギリギリまで   お互いの体を貪り合った。   逆立ちしたって一滴も絞り出せないってくらい、   思う存分欲情の証を放出して、別れの朝を迎えた。   室に備え付けのユニットバスで ――    柊二の病室は特別室! ――    身支度を整え出てきた倫太朗をベッド脇へ呼ぶ。 「なに?」   と、身を屈めてきた倫太朗の首へチェーンを通した   あのプラチナリングをかけてやる。 「! 柊二、これは ――」 「虫よけ」 「え?」 「お前、八方美人なとこはまだ治ってねぇからな、  アメリカじゃ狼が無限に寄ってきそうで、  オレは気が気じゃない」 「って、知ってたの? 派遣の事」 「大吾に言われた……お前の成長を邪魔すんなって。  それに、自分の立場をもう1度良く考えろとも」 「そう……」 「オレ、神宮寺の娘と結婚する。でも、何年か経って、  まだ今の気持ちのままでいられたら、妻との関係は  清算して、もう1回、お前にプロポーズするよ」   倫太朗の目尻に涙が滲む。 「泣くなって」 「ありがと、柊二……俺ね、昨夜は凄く迷ってた。  けど、来て良かった。あつしに言われたんだ。  何も言わずに旅立つのは逃げるのと同じだって  ……本当に、来て、良かった……」 「愛してる、りんたろ」   今回のひと騒動で会えなかった数ヶ月でさえ、   こんなにも大きく変わった倫太朗。   あと2年も会わないでいたら、どんな変貌を遂げるか?   本当に今から2年後が物凄く楽しみで待ち遠しい。    『パートナー』完

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