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エピローグ

目覚めればポートレートに囲まれていた。 「これって……僕か……?」 客室に備え付けられているメモ用紙にボールペンで描かれた肖像画。 小さいサイズいっぱいに細い線で丁寧に描き込まれており、式部は寝惚け眼に一枚手に取ってまじまじと眺めた。 「お前がブランチの時間になっても昏々と寝てるから、暇潰しに描いた」 「……え? ブランチって、今何時……じゅ、十一時半……ちぇ、チェックアウトは……」 「フロントに電話してレイトチェックアウトにしてもらった、三時までゆっくりできる」 クリスマスプレゼントに占領されたソファには座らず、隹川は昨日と同じ服装で窓辺に立っていた。 「雪が降ってる」 細く開いていたカーテンが全開にされる。 曇り空からちらつく雪。 凍えた街に音もなく降る氷の結晶を暖かい部屋の窓から見、隹川は式部に教えてやった。 「そうなのか……隹川、この絵はどうするんだ?」 「俺が持って帰る」 「そうか」 「持って帰って向こうでオカズにする」 「え? い、嫌だ、それなら僕がほしい」 寝入る寸前に隹川にバスローブをちゃんと着せられていた式部は。 ベッド上に十枚以上はあるポートレートを一枚ずつ拾い集め、改めて鑑賞した。 つい先程までの寝顔を描いたものもあれば、隹川と出会った頃の中学時代の自分もいる。 ご丁寧に女装姿まで……。 『イタズラの代償、思い知ったかよ、式部?』 「……出会いは散々だったのに」 「何か言ったか、式部」 「ううん、別に」 「ホテルを出たら飯に行こう。何が食べたい?」 「夏に連れていってもらった激辛ラーメン以外なら何でもいい」 「わかった。で。さっき、出会いは散々とか抜かしやがったな」 「……ちゃんと聞こえていたんだな」 「今はどうなんだよ?」 窓辺から大股で数歩移動し、ベッドの端に腰かけた隹川は半身を起こしている式部に問いかけた。 式部は丁寧に重ねたポートレートを胸に抱いて答える。 「大好きだ、隹川」 上体を捻って自分の方へ顔を傾けていた隹川に自分からキスをした。 年下で真面目な恋人からの滅多にない愛情表現に満更でもなさそうに口角を持ち上げ、隹川もまたお返しの言葉を。 「愛してる、式部」 「うん」 「お前と一緒に過ごせる人生なら何回だっておかわりしたい」 式部は幸せそうに声を立てて笑った。 集めたポートレートを空中へぱっと手放し、雪の代わりに不揃いに舞って着地する前に、隹川に思いきり抱きついた。 「僕もだ」 そばにいるだけで甘くなる時間。 こんなにもかけがえのない恋人(おやつ)、きっと、どこにもない。 end

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