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第16話

  仕事から帰って、旅行の荷物を再確認していると、   静流先輩からメールが届いた。   彼女は今月の初めの大安吉日、匡煌さんと結婚し   各務家に嫁入りした。   おそらくこのメールはその時の物だろう。   笑いながらメールを開けた時、   ジェイも帰ってきた。 「ふ~ん、彼女があつしの姉ちゃんかぁ、  あつしに似ず綺麗だな」 「先輩が聞いたらきっと喜ぶよ」   添付データの写真は10枚程。   挙式は神田明神(神前式)で執り行い。   披露宴を帝国ホテルでやったらしい。   お色直しのドレスチェンジは4回!   どのドレスもとても似合っている。   何枚か写真をめくっていくと、   うち1枚に柊二の後ろ姿が写っていた。   後姿だけで分かってしまう自分に驚き、   鼓動が速くなるのが分かった。   写真の後姿は、誰かと話している感じだった。   ジェイに気付かれないように次の写真を見る。 「どこのホテルなんだ?」 「帝国ホテルだって」 「さすが、金持ちは違う」 「うん」   ひと通り見て、   ジェイはタバコを吸いにキッチンへ行く。   俺はまた写真を見始めた。   全ての写真に柊二の姿がないかもう1度探すが、   写っているのはキャンドルサービスの写真だけ   だった。   元気なら良い……   姿を見られて嬉しい……   俺はその写真をパソコンの新しい壁紙に   設定した。   少しでも、姿を見たい。   女々しい自分に呆れながらキッチンに向かった。   換気扇の下でタバコを吸う。   ジェイがコーヒーを入れてくれた。 「―― んじゃ、今夜のメニューは  冷蔵庫の中身も空っぽにしなきゃなんないから、  何でも載せピッツァにするか?」 「するする! ピッツァ大好き」 「じゃ、ピザ生地とモッツァレラチーズ買ってきてよ」 「了解! 他には?」 「ビールとコーラ」 「オッケー、じゃ、いってきます~」   柊二の写真効果で気分が軽い。   見られるだけで嬉しい……   会えなくても、我慢出来る。   俺は弾んだ足取りでMrシャルマの店へ向かった。

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