18 / 53
願いが叶うその前に
2018/07/22
・そんな顔をするのがいけない
・ミサンガ
・日焼け痕
タイトル『願いが叶うその前に』
19分
夏休みも半分過ぎた頃。
君の体から、憎々しい存在が消えた。
「ミサンガ、切れたん?」
「うん、やっと」
幸せそうに笑うなよ。
着け始めた頃、春ぐらいだったか、今時ミサンガなんて、と笑ったらえらい剣幕で怒られた。
大好きな先輩からもらったとかで、それはそれはもう大切そうに愛おしそうに、ミサンガを見つめていやがったっけ。
それからは、体の一部になったみたいに、先輩が君の右足首を支配した。
夏休みに入ってからはずっとサンダル履きだったから、ミサンガが外れても日焼け痕が残っている。
切れてもなお、君の体を支配する。
心はもちろん言わずもがな。
「これで願い事が叶うってか?聞くまでもないと思うけど、願い事って…」
「…うん」
ほら、また。
そんな顔をするのがいけないんだからな。
君の願いが叶う前に
俺の願いを先に叶えさせてよ。
「うわ、えっ?何すんだよ?!」
…そう、そんな顔が見たかったんだ。
乱暴に踏み荒らしたあの子の心と体は
ミサンガ同様千切れてしまったかな?
ともだちにシェアしよう!